「AI(人工知能)の導入により、自分の仕事がなくなるかもしれない」――。これまでたびたびメディアで報じられてきたことですが、「まだまだ先の話でしょ」「自分には影響ないだろう」と、どこか人ごとのように考えていた人も少なくないのでは? しかし、もはやそれは、現実のものとなりつつあります。

 昨年秋には、大手銀行が相次いで大幅な人員削減を発表し、話題を呼びました。みずほフィナンシャルグループ(FG)では、2026年までに従業員1万9000人を削減、三菱UFJフィナンシャル・グループでも2023年度までに従業員6000人を削減すると報じられ、こうした動きは他の銀行でも出てきています。これらは、AIを活用して業務量を削減し、収益力の向上と組織のスリム化を図るものでリストラと直結するわけではないものの、「AIの導入で、これまでと違う働き方が求められる」という現実を突きつけられる出来事となりました。

 キャリアカウンセラーの錦戸かおりさんは、こう話します。

 「あの報道により、『今まで私には関係ないと思っていたけれど、少し危機感を覚えた』という人も多かったようです。たとえ今は、AIの足音を感じなくても、今後導入が進むと、仕事を取って代わられる場面が出てくるかもしれません。ルーティンワークを主体とした業務は自動化されていく可能性が高いと思います」

私の今の仕事も変わるの? (C) PIXTA
私の今の仕事も変わるの? (C) PIXTA

「とはいえ、ピンとこない」その理由

 とはいえ、「なんだかピンとこない……」という声も聞こえてきそうです。先日発表された2017年平均の有効求人倍率は1.50倍と、44年ぶりの高水準を記録したばかり。転職市場にも追い風が吹いており、まさに今は「売り手市場」の真っただ中です。現在、転職を考えている人にとっては心強い状況といえますが、その中身をひも解くと、「また違った光景が見えてくる」と、錦戸さんは指摘します。

 「女性の多くが希望している事務系に限っていえば、パートを合わせて0.4%程度にとどまっています。つまり、10人受けて4人しか通らないという狭き門です。例えばそうした事情を知らない家族から、『(有効求人倍率がこれほど高いのに)なぜあなたは受からないの?』と言われ、傷ついてしまうといったケースも聞きます」

 迫りくるAI化、人気職種は相変わらず狭き門……。どうやらこれまでの意識を変える必要がありそうです。プライベート重視で「ほどほどに働く」――。そんな「ゆるキャリ」志向は、これからの時代、もはや無理?