寝る間もないほどの忙しさや思うようにならない恋愛にくじけそうになりながらも仕事に生きがいを見出していく女性たちを主人公にした人気漫画「サプリ」や「働きマン」。ドラマ化もされ、ヒールをカツカツ響かせながら都会でバリバリ働く主人公たちに憧れた人も多いのではないでしょうか。今回は、そんなアラサー女性の1人が、地方から東京に出て、憧れの世界に近づいていく転職ストーリーをお送りします。

新人時代は自転車で営業

 都内のビジネス街にあるカフェでお話を聞いたのは、ベンチャーのWebのシステム開発会社で人事・広報の仕事をしている綾さん(30歳)。

 「今の仕事に変わってからはまだ1年弱。採用の仕事は初めてでしたが、今年は新卒、中途を合わせて20名近く採用することができました。また、広報の仕事も初めてで、一から学びながら手探りで進めているところです。ですが、前からやってみたかったことなので、楽しいです」と、明るい表情で話します。

やってみたかった仕事にまい進しています! (写真はイメージ) (C)PIXTA
やってみたかった仕事にまい進しています! (写真はイメージ) (C)PIXTA

 都会的で華やかな雰囲気の綾さんですが、以前は地元の地方都市でかなり“泥臭い”仕事をしていたとのこと。「最初に地元で入った会社では、“営業自転車”に乗って、毎日地元の町の飲食店を営業して回っていたんです」

 学生時代、「サプリ」や「働きマン」の漫画やドラマに憧れていたという綾さん。「パリッとスーツを着こなして、バリバリ働く主人公たちのように働きたい」と、入社したのは、地元のメディア関連の会社でした。地元のグルメ情報誌をつくる編集部に配属され、任されたのは、地元の飲食店を回って、掲載交渉をする営業の仕事でした。

尊敬していた上司の異動が転機

 「とにかく、契約を取るために、片っ端から営業をかけていくのが仕事です。交通手段は車ではなく、小回りの利く自転車と徒歩。地方都市なので、飲食店が集まるエリアが固まっていたのと、営業車を維持するお金がなかったのと、両方の理由だったと思います。1日最低15~20軒はアプローチするのがノルマで、雨の日も風の日もせっせと自転車をこいで回っていました」

 仕事内容は、単に営業して掲載の許可を取り付けるだけではなく、お店の情報を取材し、写真を撮り、記事を書き、編集し、確認してもらい、入稿するといったところまで1人でこなさなければなりませんでした。ハードな毎日でしたが、励みにしていたのが、当時30代の仕事ができる女性編集長の存在でした。

 「まさに『働きマン』の主人公のような、ものすごく仕事ができて結果を残すことができる人でした。お子さんもいるのに、単身で出張にいらしたりしてバリバリ働く姿がかっこよくて。憧れのロールモデルでした」

 毎日自転車をこいでがむしゃらに働くうち、編集部で働き始めて3年ほど経った頃には、「営業トップ、というわけではありませんでしたが、確実に安定的に結果を出せるようになり、職場でも一目置かれるようになりました」

 ところが、その後、尊敬していた女性編集長が異動となり、新たな編集長の就任によって、職場の雰囲気はがらりと変わってしまいました。編集長だけでなく、仲の良かった同僚や先輩も辞めたり、異動したりしていなくなり、綾さんは居づらさを感じるようになってきました。それと同時に、学生時代から持ち続けてきた一つの思いが浮かびます。

 「東京で働きたい」