これは、外的環境の要因だと考えています。メンバーの働く姿勢が、東京にいるときとあきらかに違うんです。具体的には「朝、会社に来たときの表情」です。とにかく明るいです。白浜滞在中は、住んでいるマンションから、メンバーが車で一緒に通勤してくるのですが、わいわい言いながら合宿みたいですね。ひとり満員電車に揺られ、やっと会社に着いた、というのとは気分が違います。いいバランスがとれているのだと思います。

東京の通勤時間が本当にもったいない

 先日、白浜でも珍しく雪が降りました。白浜オフィスも早々に閉めて、在宅勤務に切り替えました。1週間前、東京でもたくさん雪が降って、交通が止まりましたよね。東京のオフィスメンバーが昼ぐらいに出社したという話を聞くと、本当にもったいないと思いました。

―― 吉野さんが白浜に移住することについて、他の社員の反応はどうでしたか?

 私が白浜オフィスに行くという話になったとき、社内には「どうして?」と考える人も少なくなかったです。確かに、仕事のこと、家族のこと、子どものこと、おそらく独身の社員が行くよりも課題が多かったと思います。でも、そんな自分が行くことが、新しい事例を作ることになる。後輩たちに、こういう働き方、生き方があることを示したい。記憶に残る姿を見せたいと思いました。

 最近は、社内の仕事上では関わりの無い部署の人から「家族と行ってどんな感じですか?」といった問い合わせが増えています。40代の社員の人が多いので、家族の生活やこれからの生き方について考えている人が多いのだと思います。

―― 家族で地方に移住するときに、一番心配なのが「子どもの教育」ですよね。吉野さんはどう考えられていますか?

 もともと、小学校で私立を考えていなかったので、心配はしていなかったです。ただ、小学校から私立へ、と考えている家族だと、このタイミングで地方へ行くのは抵抗があるでしょうね。

 地方では、学校の選択肢が狭まるのは事実ですが、教育は家族の環境次第だと思っています。伸びる環境を、親が提供できるかどうか。教室で習うこと以上に、自然から学ぶこと、まわりの人から学ぶことが多いのだと思っています。

 友達の悩みとか、勉強の悩みとかは、都会でも地方でもあります。大切なことは「いかに早く、その悩みを察知して、一緒に取り組めるか」だと思います。そのためには、家族が一緒に過ごす時間、そして会話が重要なのです。そして、それができる「生活」や「働き方」を大切にしたいです。