カルビーは2009年に代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)に就任した松本晃氏の指揮のもと、以降、利益も売上高も毎年成長し続け、女性管理職比率は6%弱から14%強へと上昇しています。時短勤務の女性役員や女性工場長も誕生。一貫してダイバーシティを推進してきた松本会長にインタビューした前編です。

「なぜ人口の半分を占める女性を活用しないのか?」と問われて発奮

日経DUAL編集長 専門家に「ダイバーシティや女性活用に意欲と推進力がある経営者は?」と聞くと、必ず松本会長のお名前が挙がります。松本会長がダイバーシティ推進に取り組み始めたのは、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人(以下、J&J)に在籍されていたころからですよね。

松本晃会長兼CEO(以下、敬称略) J&Jの社長に就任して3年目、2001年のことでしたね。グローバルなミーティングで、本社の上司に言われたんです。「お前は何をやっとるんだ」と。「俺が知っているかぎり、日本の人口の半分は女性のはずだ。なのにお前は女性を全く活用していないじゃないか」と。

―― 当時、社内に女性の管理職や役員はどのくらいいたのでしょう。

松本 女性社員はたくさんいましたが、管理職はほとんどおらず、執行役員にいたっては1人もいないという状況でした。その上司が言うには「世界中で女性を活用していないのは2カ国だけ。日本とパキスタンだ。パキスタンは宗教上の理由があるから理解できる。日本は何の理由もない。なぜやらないんだ」と。僕は素直なんでね(笑)、「やってみるか」と発奮したのです。

―― どこから着手したのですか。

松本 何か始めるとなったら、まずゴールセッティングするんです。そこで、社長の任期だった2008年3月までに「35-25-25」という数値目標を設けた。女性の比率を全社員の35%、管理職の25%、執行役員(ディレクター)の25%にするという意味です。そして「僕の定年退職までにこれをやってやるわ」とみんなに宣言した。「俺はやる」と。