暗闇の中で、心に火が灯る出会い

 トモちゃんと出会ったのは、定食屋さんで一人でバースデーを過ごした6月から2カ月後のこと。その日は日曜日で時間を持て余して、「映画でも見て帰ろ」と六本木ヒルズにふらりと立ち寄っていました。何の映画を見に行ったかは覚えていません。そもそも本当に映画を見たくて行ってるわけじゃないですからね。

 上映まで少し時間があったので、セレクトショップに入ってアクセサリー売り場に近づいたんです。一人でいるところを誰かに見られたくなくて、帽子を目深にかぶって。これも、当時の私の「ええかっこしたい」見栄ですね。

 そしたら、「あれ、美穂さん!」とすぐ近くにいた店員さんが声を掛けてきたんです。「覚えてますかー! ラクロス部の西田ですー!」。私の青春、ラクロス時代のつながりでかつて知り合っていた他大学の後輩が、偶然にもアクセサリー売り場で働いていたんです。

 東京砂漠で寂しさに駆られていた私は、関西弁を聞くだけで心がほどけるような気分に。「じゃ、なんか買うわー」とフープピアスを手に取ると、「ちょっと待ってくださいね、美穂さん。アクセサリーを選ぶときは全身のバランスが大事なんですよ」とトモちゃんは、お店の端っこからガラガラと姿見を引っ張ってきました。「ほら、ここに立ってください。うーん、こっちのほうがいい!」。私はせっかく再会した後輩のためにとちょっと奮発して、2万円くらいのピアスを買うことにしました。

「東京砂漠で弱っていたから、関西弁とラクロスの話題でホームに戻ったような気がしてホっとしたんです」
「東京砂漠で弱っていたから、関西弁とラクロスの話題でホームに戻ったような気がしてホっとしたんです」

 商品を決めてお会計をしている間にトモちゃんが教えてくれた話によると、私は読売テレビ時代に、心斎橋の高島屋でもダイヤのプチネックレスを買ったそうです。すっかり忘れてたんですね。

――ご自分が周りの人にしてあげたことは、あっさり忘れてしまうタイプなんですね。

 そうなのかな。懐かしい会話を交わしながら連絡先を交換しようということになり、トモちゃんが自分の電話番号とメールアドレスを黄色い付箋に書いてくれました。

 何気なくその文字を眺めていた私は、突然、息が止まりました。「……!」トモちゃんのメールアドレスに「69」の文字。もしかして……。「はい、誕生日、6月9日ですよ」「ウッソー! 私もおんなじー」「ほんまですかー」。その数日後には一緒にご飯を食べる約束をしました。

 六本木で串カツをつまみながら(これも関西人ならではですね)、お互いに身の上話を交換し合う中で、トモちゃんが同じ大学のラクロス男子部の子と結婚したことを知って、私はとてもうれしくなりました。

自分がしたことが誰かの役に立っている

――「小西美穂が『ラクロス界のレジェンド』と呼ばれる理由」の記事で詳しく書いたように、小西さんは関西でラクロスというスポーツを切り開き、盛り上げていた張本人ですものね。

 私がやったことが、誰かの幸せを生むきっかけにもなったんやと。「私もちょっとは人の役に立ってたんやな」と、心にポッと火がともるような気持ちになれたんです。その頃、仕事面で「人に求められていない不安」に押し潰されそうになっていた私にとって、トモちゃんの笑顔は救いになりました。



 このトモちゃんとの出会いは、その後の小西さんの人生を大きく変えることになる。長い長いトンネルを小西さんをどのように抜けたのか。続きは、「小西美穂が『ええかっこ』を捨て、素直な人になれた理由」をお読みください。

聞き手・文/宮本恵理子 写真/稲垣純也

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