漠然とした不安に、どう向き合うか

 では、不安を解消するには、どうすればよいのでしょうか? 将来を予見して自分のライフプランを決めることができたらどんなに良いかと思いますが、残念ながらそうはいきません。

 ならば、マネープランだけでも、先に自分で決めてしまってはいかがでしょうか。そのプランに合わせて、お金を振り分けるのです。

 例えば、私はBさんに、次の3種類にわけることをご提案しました。

(1)いざというときのお金
(2)いつか何らかの形で使うお金
(3)将来のイメージに近づくためのお金

 1つ目の「いざというときのお金」は、病気やけがで想定外の出費がかかった、仕事を休んだ、辞めた、親の介護が必要になったなど、いざというときに使いたいお金です。困った時にすぐに引き出せるように、普通預金や現金で持っておきます。

 金額の目安は、生活費の半年から1年分以上。Bさんは1カ月の生活費が20万円だったため、120万円〜240万円を「緊急用」の口座を新しく作って入れておくことにしました。

「夢のためのお金」を分けておく

 2つ目の「いつか何らかの形で使うお金」は、まだライフプランが決まっていないものの、人生の決まった局面を迎えたら必要になる、まとまったお金です。

 例えばこの先子どもを産むとしたら教育資金が、老後を迎えたら公的年金では足りない生活費が必要です。今はまだはっきりと決まっていなくても、いずれはどこかのタイミングで使う可能性が高いまとまったお金を確保しておきます。

 ここには、少なくとも数年内には引き出さなくても差しさわりのない金額を、貯蓄型の保険や定期預金などに置いておきます。Bさんの場合は、約1000万円の貯蓄のうち300万円を貯蓄型の保険にして、「自分で家を買うことになったらその頭金に、そうでなくても老後の資金に使えるように」しました。

 3つ目の「将来のイメージに近づくためのお金」は、なりたい自分の姿を想像したときに、必要だと予想されるお金です。

 2つ目と似ていますが、2つ目は生きていくためのお金であるのに対して、こちらは夢のためのお金、というイメージです。例えば「海外挙式をしたい」と望んでいれば渡航費や挙式費用など、「いつか自分のお店を持ちたい」という夢があれば開業資金などにあたります。

 読者の方は「まだライフプランが決まったわけではないうちからお金を準備したって、もし予定通りにならなかったら無駄になるのでは?」と思われるかもしれません。ですが、やみくもに貯蓄をして、もしかしたらそれを「結婚式に使うかもしれない」「仕事を辞めて留学するかもしれない」「自分の老後に使うかもしれない」などとあれもこれもと考えているだけでは、貯めても貯めてもまだ足りないような気がしてきてしまいます。

 ならば、実現するかどうかはさておき、「自分はこうなりたい」と願うビジョンを持って、それに向かって具体的にお金のアクションを起こしたほうが建設的です。そこで、「これは挙式のためのお金」というように、自分でお金にテーマをつけておくのです。

 3つ目のお金の金額の目安は、達成したい目標によって異なります。Bさんの場合は、これまで普通預金に貯蓄していた毎月8万円のうち、2万円を旅行積み立てに、もう2万円を外貨預金の積み立てにあてることにしました。海外が好きなBさんは、いつか結婚することになったら海外挙式のために、結婚しなかったらヨーロッパを周遊するために使うつもりです。