「寛容さ」があれば人は変われる

――では、いざ結婚して一緒に生活するとなったときに気を付けるべきことはなんでしょう。

阿川 自分の中の引き出しに「寛容さ」を持っておくことですね。例えば、「私は極力シンプルな部屋で、物を置かない生活をするのが理想。それが一番心地よいと感じる人間なんです」なんて先に決め込んじゃうと、それ以外のスタイルを排除しちゃうでしょう。

――さっきのお話(「失敗をたくさんした人は老後は人気者」阿川佐和子)でいうと、条件が「狭い」状態ですね。

阿川 だけど、相手がごちゃごちゃした部屋を好む人だったとして、試しにごちゃごちゃした部屋で生活してみたら、自分が変わるかもしれない。変わることで何か別のチャンスに出合えるかもしれない。自分が求めるライフスタイルをぎちぎちに決め込んで、死ぬまでそうしていたいなら、どうぞ一人で生きていってください。だけど、他の誰かの人生と融合して生きていきたいなら、最初からぴったり合う人なんているわけないんだからね、って思いますよ。

女の友情は復活する

――それは結婚だけでなく、人とのコミュニケーションを考える上でも大切なことかもしれないですね。読者世代はちょうど、仕事、結婚、出産と転機が訪れる世代。女性にはさまざまな生き方の選択肢がありますが、女同士の友情は、この転機によって関係性が変わります。

阿川 学生時代の友達とはどんどん疎遠になっていきますよ。私が仕事をしていて向こうが専業主婦だと飲みには誘いづらい。久しぶりに会えても、彼女は子どもに「静かにしなさい!」とか言いながらで、私の悩みなんて打ち明ける空気じゃないですし。悩んでいても、どう慰めていいのか分からない。「仕事大変ね」「育児大変ね」とお互い口では言うけど、それ以上の具体性はなくなっちゃう。うっかり「仕事したほうがいいよ」なんて言おうものならそれこそマウンティングになるから、アドバイスもできない。

――阿川さんは以前に「女は身辺が変化すると友情があっさりと薄れる」というようなことを書かれていましたね。

阿川 でもね、そうやって自分の選んだ道を歩むでしょ。何十年もたって、孫ができる人もいれば、離婚する人もいる。そうして60代も半ばくらいになると、また集まり始めるんですよ。家族がいても、子どもはもう手を離れてるし、夫中心の生活じゃなくなってるから。「夜、出られる?」「出られる、出られる!」って。今、私の女子高時代の友達連中6、7人は、そんな感じです。

――友情が復活するんですね。

阿川 それで互いを心から認め合うんですよ。疎遠だった間に、あんたいろんなことがあったんだね。仕事を続けるってそんなに大変なんだ。専業主婦で子どもを育てるってそんなに大変なんだ。そうか、あんたよく頑張ったね。あんたもね、って。