好き嫌いじゃなく「これが私の仕事だから」
阿川 だから「これ、仕事だから」に尽きます。対談であれ番組であれ、私にはそれらを面白くする責任があるから、必死になってやるだけ。ギャラを頂かないような場でも、もちろんそう。相手がおじさんでも誰でも、そこでの振る舞いは全部「与えられた場所で自分に課せられた役割の一部」。だから必死になるんです。だって家族の話、毎回真剣に聞いてたら、疲れますって。
――おじさんとうまくやり取りする「コツ」みたいなものはないのでしょうか。
阿川 昔ね、「自分の仕事を振り返ると、すべてがおじさんとの戦いだった」と言ってる女性編集者の知り合いがいてね。ある時、彼女の会社に新入社員の女性が入社してきたんですが、おじさんたちとすぐ仲良くなったんですって。色気で攻めてるわけでも、カマトトぶってるわけでもないのに。それで不思議に思った編集者の彼女が聞いたんですって。「どうすると、そんなに仲良くなれるの?」って。そしたら、新人いわく「簡単です。なんでもいいから褒めりゃいいんですよ」って。
――(笑)。分かります。(※注:インタビュアーは男性)
阿川 おじさんは職場でなかなか褒められませんからね。人間はある程度熟練した年齢に差し掛かると、言わなくても分かるだろうとか、面と向かって褒めるのが恥ずかしいっていう空気が、周囲の人々の間に出来上がってしまうので。だからおじさんはいつも褒められ足りない、褒められたくてしょうがない。褒めにくければ、なんでもいいから、目についたものを褒めればいいんですよ。(インタビュアーに向かって)あ、シャレた眼鏡ですね、とか。
――今、気分よかったです(笑)。
阿川 それから、男の人は社会的な上下関係をすごく気にするじゃないですか。組織内でどっちの肩書が上とか、どっちのほうが年上とか。男同士って、職場から離れた友達同士の飲みの席でも、それをすごく重んじるでしょう。だから女性としては、その上下関係を重んじてあげる一方で、あえて無視する態度をうまく織り交ぜるのがいいのかも。
――確かに、おじさんは偉くなると肩書を意識して振舞わなきゃいけなくなりますから、ヒエラルキーを飛び越えてフレンドリーに接してほしい気持ちがどこかにある気がします。