ブログの世界からグラビアアイドルへ

――学校に行かなくなってからは、どのように過ごしていたんですか。

 時間を持て余していたので、父にもらったパソコンで、タイプレッスンとかゲームとかをしていました。そうした中で、インターネットの掲示板で初めてメール交換をした人が堅い内容の出版物を手掛ける出版社の方で。当たり障りのないやり取りをしていたら、ホームページを作ってあげると言われたので、作ってくれるならと、お願いしたんです。ブログみたいなページだったんですけど、引き籠もり生活なので、日常について書くネタがない。だから、頭の中にある世界を文章にして読者が2択で読み進んでいけるようなものを作ってもらいました。そうしたら、面白いねって相手の方が言ってくれて、せっかくだから君の写真も載せてみないかと。それで、バストアップの写真を送ったら、ブログのトップページにバンと貼られてしまったんです。14歳の時のことです。

 当時は、その年齢でパソコンをいじってインターネットをやっている子は珍しかったのと、ネットアイドル全盛期だったので、それだけでいろんなネットアイドルランキングに勝手に登録されてしまって。で、1位とか2位とかになって、芸能事務所にスカウトされ14歳でグラビアアイドルとしてデビューしました。

――グラビアアイドル時代にはカメラマンの方と知り合いになったと思いますが、それが写真を撮ろうと思うきっかけになったんでしょうか。

 写真に興味を持つのは、もっと後です。

 グラビアの仕事は、辞めたかったんだけどなかなか辞められなくて。売れないまま20歳の時に、グラビアの内容が過激になり始めてこれはちょっときついなと。そもそも人前に出ることが得意じゃないし、辞めるには事務所などを説得する理由が欲しいと思ったので、お世話になっていたカメラマンさんに相談したら、「お前、イラストが上手なんだからイラストレーターになったらどうだ」と言われて。

 絵を描くことはすごく好きだったんですけど、小さい時からそれを仕事にすると好きな絵を描くことが嫌いになってしまうと思って、ずっと避けていました。でも、グラビアアイドルを辞めたい一心で、じゃあ、イラストレーターになろうと。

 最初はよかったんですけど、案の定、理想と現実のギャップに苦しむことになりました。描きたくない絵を描かなきゃいけなくなったりして、すぐに限界が来て。スランプに陥った時に海外旅行をするようになったんです。

 私は見たものを忘れやすいのでデジカメで現地の写真を撮ったんですよ。それをやっぱりカメラマンさんに見せたら、今度は「おまえ写真が上手だな」と言われたんです。特に構図が上手だと言われて、ああ、私そうなんだ。人より写真が上手なんだって。

 でも、カメラマンになりたいわけでも写真が好きなわけでもなかったから、その後も、ただ海外旅行をした時だけ記録としての写真を撮ってブログに上げていたんです。その中に、訪れたアフリカの村の、少数民族の女性と同じ格好をするために私が初めて裸になった写真があって。アフリカ中西部カメルーンの山岳地帯に住むコマ族を訪れた時の写真です。

 それが、いろんな交流サイト(SNS)にシェアされて拡散し、ウェブメディアに拾われ、テレビの人の目に留まって、「フォトグラファー、ヨシダナギ」という肩書が付けられた。そこで初めて、ああ、私ってフォトグラファーなんだって。ちょうどイラストレーターを辞めたかったし、テレビでフォトグラファーと言われたんだったら、もうそう名乗っていいんだと思って今に至っています。フォトグラファーになることを目指したわけではない。だから、今もきっと「何かの途中」なんだと思います。

ヨシダさんが、アフリカ南西部ナミビアのヒンバ族を撮影した1枚。ヒンバ族の女性は体に赤土を塗る (C) nagi yoshida
ヨシダさんが、アフリカ南西部ナミビアのヒンバ族を撮影した1枚。ヒンバ族の女性は体に赤土を塗る (C) nagi yoshida