新入社員の指導を任される読者も多いこの時期。新人に対して、「遅刻しないでね」「失敗しないでね」と言いたくなることもあるはず。でも、この言い方は、相手を励まして行動を促す話し方の技術「ペップトーク」において、もっとよい伝え方があるそうです。ペップトークの4つのステップを聞いた前回に続き、日本ペップトーク普及協会専務理事の浦上大輔さんに、職場のさまざまな場面でペップトークを活用する方法をお話しいただきました。

第1回 先輩社員が告白 私たちが新入社員にモヤモヤする瞬間
第2回 新人のモチベーションを上げる「認める」スキル
第3回 新人のやる気をそがずにミスを指摘する二つの方法
第4回 新人が「期日を守れない」背景と対処法
第5回 新入社員の正しい「叱り方」 叱るべき状況は二つだけ
第6回 後輩のやる気を引き出す「ペップトーク」の4ステップ
第7回 電話に出ない・言われたことしかやらない新人の認め方(この記事)
第8回 励ますつもりが逆効果? 「嫌味な先輩」と思われない秘訣(3月27日公開)

ネガティブをポジティブに変換する方法

 皆さんは、新人に対してこんな言い方をしたことはありませんか?

「遅刻しないでね」
「ミスしないようにね」
「失敗しないでね」
「表情が硬いよ」
「忘れ物してない?」

「明日は絶対に遅刻しないでね」 (C)PIXTA
「明日は絶対に遅刻しないでね」 (C)PIXTA

 前回お伝えしたように、言葉は脳にイメージを呼び起こします。インターネットの画像検索で「失敗」と入れると、失敗している人の画像がたくさん出てきますよね。それと同じようなことが脳の中では起こっています。

 そのため、「間違えないでね」と言われると、間違える自分の姿が浮かんでしまいます。「間違えない」→「無事にやりとげる」と頭の中で意味を変換することはできますが、脳が受けるイメージは言葉に引っ張られます。ですから、何か行動を促すときは、「してほしくないこと」+「否定」ではなく、「してほしいこと」をダイレクトに伝えるようにしましょう。表現をネガティブからポジティブに変換するのです。

 ちなみに、最初に挙げた言葉は、次のように変換することができます。

【ネガティブ→ポジティブ 変換例】
「遅刻しないでね」→「時間に余裕を持って来てね」
「ミスしないでね」→「しっかり準備してね」
「失敗しないでね」→「成功するように応援しているよ」
「表情が硬いよ」→「笑顔で話してみて」
「忘れ物してない?」→「持ち物を確認してみよう」

 「遅刻しないで」と言われて遅刻している自分をイメージするよりも、時間に余裕を持って到着して、みんなを迎えている自分をイメージしたほうがいいですよね。

 ポジティブな言い方をしていると、言った人の印象もよくなります。同じ内容でも、「してほしくないこと」+「否定」で話す人には無意識のうちにプレッシャーを感じてしまいますが、ポジティブな言い方なら「一緒にいると居心地がいい」「やる気が出るような感じがする」という印象になるからです。

「明日は大事な打ち合わせだから、時間に余裕を持って来てね」 (C) PIXTA
「明日は大事な打ち合わせだから、時間に余裕を持って来てね」 (C) PIXTA