人を元気づけたり勇気づけたりするための言葉がけ「ペップトーク」を知っていますか? もともとはスポーツの場で使われていた「励ます技術」ですが、行動を引き出すための声掛けであるペップトークは、職場で先輩社員が活用できるスキルなんです。日本ペップトーク普及協会専務理事の浦上大輔さんに、ペップトークとは何か、実際に職場で使うためにはどうすればいいかを聞きました。

第1回 先輩社員が告白 私たちが新入社員にモヤモヤする瞬間
第2回 新人のモチベーションを上げる「認める」スキル
第3回 新人のやる気をそがずにミスを指摘する二つの方法
第4回 新人が「期日を守れない」背景と対処法
第5回 新入社員の正しい「叱り方」 叱るべき状況は二つだけ
第6回 後輩のやる気を引き出す「ペップトーク」の4ステップ(この記事)
第7回 「電話に出ない」「言われたことしかやらない」新人への声掛け(3月23日公開)
第8回 励ますつもりが逆効果? 「嫌味な先輩」と思われない秘訣(3月27日公開)

人を励ます言葉がけ「ペップトーク」

 ペップトークとは、簡単に言うと「人を励ますための言葉がけ」です。「ペップ」には、元気や活気という意味があります。もともとは、アメリカでスポーツの試合前に監督やコーチが、緊張したり興奮している選手の気持ちを上げさせたり、反対に落ち着かせることで、感情をよい状態にするための声掛けの技術でした。いくつか具体的な例を紹介しましょう。

 私は以前、よくスキーをしていました。急斜面を前に緊張している時にアメリカやニュージーランドのインストラクターに言われたのが「落ち着いて! 君ならできる!」という言葉。これがペップトークです。また、2011年7月にドイツで行われたFIFA女子ワールドカップの決勝では、なでしこジャパンを率いる佐々木則夫監督が、PK戦を前にした選手たちに「思いっきり楽しんでこい!」と言いました。これもペップトークですね。

ペップトークは、人を励まし、やる気にさせます (C)PIXTA
ペップトークは、人を励まし、やる気にさせます (C)PIXTA

 試合直前に励ます言葉として生まれたペップトークですが、普段から人を励ますシーンで使うことができます。まずは、ペップトークの仕組みを説明しましょう。

ペップトークは4つのステップで完成する

 ペップトークは、以下の4つのステップで成り立っています。

【ステップ1】受容
【ステップ2】承認
【ステップ3】行動
【ステップ4】激励

 ペップトークは「行動」を引き出すための声掛けです。「何をしてほしいか」という行動を示すことが最も重要なのですが、いきなり「結果を出して」「成功させて」と言われても、相手は受け止め切れません。そのため、「よし、やろう」と行動に起こしてもらうための心の準備として、「受容」と「承認」という段階が必要なのです。そして、最後には背中を押す「激励」も重要です。

 それでは、「初めてのプレゼンを前に、緊張している新人への声掛け」というシーンを例に、4つのステップを見ていきましょう。