まもなく4月。新入社員の指導係を任される人も少なくないのではないでしょうか。右も左も分からない新入社員、時には叱らなければならない場面もあるけれど、先輩社員としては「叱り方が分からない」「注意しても直らない」といった悩みを抱えることも。業務改善・オフィスコミュニケーション改善士の沢渡あまねさんに、新人を「叱る」スキルについて聞きました。

第1回 先輩社員が告白 私たちが新入社員にモヤモヤする瞬間
第2回 新人のモチベーションを上げる「認める」スキル
第3回 新人のやる気をそがずにミスを指摘する二つの方法
第4回 新人が「期日を守れない」背景と対処法
第5回 新入社員の正しい「叱り方」 叱るべき状況は二つだけ(この記事)
第6回 「励ます」スキル ペップトークのすごい効果(3月20日公開)
第7回 「電話に出ない」「言われたことしかやらない」新人への声掛け(3月23日公開)
第8回 励ますつもりが逆効果? 「嫌味な先輩」と思われない秘訣(3月27日公開)

「叱っても響かない」新人にどう接する?

「叱っても響かない」新人の特徴
・ミスを注意しても謝らない。言い訳されると教える気がなくなる。
・口頭で注意した後に、上司をCCに入れたメールで注意したけど直らない。

「何度も注意したよね?」 (C)PIXTA
「何度も注意したよね?」 (C)PIXTA

そもそも叱るべき状況は二つしかない

 まずは、叱るべき状況の話からしましょう。叱るべき状況は二つありますが、強く叱らなければならないのは(1)のときだけです。

(1)緊急事態
(2)他人に迷惑を掛け続ける状態

 (1)緊急事態は、その行動がセキュリティー上の事故や大きな事件につながる場合です。「そのメール送っちゃダメ!」など、相手の思考を停止させてでも止めなければならない。これは鉄則です。例えば、上から鉄骨が落ちてくるような緊急事態に、「大変恐縮ですが、今、上から鉄骨が……」なんて悠長に話し掛けていられませんよね。相手に寄り添っている場合ではないので、とにかく叱ることで強制的に行動を止めます。もちろんその後に説明するというフォローは大切です。

 ただし、(1)に該当するシチュエーションはめったにありません。普段の仕事で重要なのは(2)「他人に迷惑を掛け続ける状態」のほう。主に、以下の二種類があります。

・組織としての生産性を下げる行動
・本人の得にならない行動

 「組織としての生産性を下げる行動」とは、お互いの生産性を下げるような仕事のやり方です。この指導では、「教えるスキル」の時にもお話しした、他者目線で視野を広げてあげる伝え方をするのがポイントです。「そういう指示の仕方だと、お客さんが困るんじゃないかな」「そういう聞き方だと、取引先が見積もれないよ」といった、相手の目線に立った言い方で指摘をします。

 「本人の得にならない行動」とは、常に仕事を丸投げしたり、あからさまに口の利き方がなっていないなど、新人自身が損をするような仕事の進め方です。こういう仕事をしていると、社内でも社外でも、いい人やいい仕事が回ってこない状況になってしまいます

 この場合は、「そういう仕事のやり方だと、あなたは仕事ができない人だと思われてしまうよ。相手に評価されなくて、チャンスを与えてもらえないよ」というメッセージをどう伝えるかが重要です。あくまでも「あなたのため」「あなたが損をするよ」という姿勢で話すのです。