こんにちは、著述・翻訳家の上野陽子です。今年1月に政府が「働き方改革」に基づいて、現在のモデル就業規則にある「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」というフレーズを消しました。いよいよ、副業時代の幕開けです。

日本で副業解禁の流れ

 厚生労働省の「副業・兼業」サイトを見るとこんなふうに書かれています。

厚生労働省では、「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っています。

 簡単に言うと、日本でも「会社の勤務時間以外は、他のお仕事してもいいよ」ということが基本となったわけです。あくまでもモデル就業規則なので、法的な拘束力はありません。でも、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」との規定を新設したことで、企業で働く人たちが副業や兼業をしやすくなりました。ソフトバンクなど大手企業が早速導入を始めています。

 なぜ副業を認める流れになったのか……例えば、オフィスのAI(人工知能)導入が一つの理由となっています。

 AI導入が進むと、人の雇用をカットする場面が増えていきます。こうした雇用率の低下を抑えるには、仕事を分け合うワークシェアなども視野に入れる必要性が考えられるでしょうが、ところがワークシェアは、一人当たりの働く時間は減るため、給料も必然的に減ります。そこで副業や兼業を認めることで、給料の不足を補い、雇用率の低下を抑えるなど、問題を解決するための施策の一つにするわけです。

ロボットさんが同僚になる日が来たら…? (C)PIXTA
ロボットさんが同僚になる日が来たら…? (C)PIXTA

 社員が副業・兼業を行うことは、企業にとってもメリットがあります。違う会社や仕事を見ることで、本来の仕事に新たな風を吹き込み、今までと違ったものの見方や考え方を取り入れることができます。また、既存の枠を超えたやり方で効率を上げ、新しいものを生み出すことも考えられそうです。

私たちの夢につながるメリットとは?

 では、私たち自身にとってのメリットは何なのでしょうか?

 事務作業から車の運転まで「AIに仕事を代わられる!」「失業する!」といった不安がある昨今。「他にも仕事をしたらいいんだよ」と考えると、気持ちもお財布も少し楽になりそうです。さらには、きちんとお給料をもらった上で好きなことを仕事にできる可能性が広がるので、考え方によっては夢をかなえるチャンスかもしれません。

 例えば、イラストが得意だけど、イラスト業で生計を立てるのは難しそうだから、会社勤めをしながら自分のペースで副業で絵を描く、という人がいます。あるいは、カフェを持ちたいけどいきなり開業するには収入が不安なら、仕事がない土日だけイベントスペースに場所を借りてカフェを展開し、軌道に乗ったら開業……という方法も。もちろん、他の会社で働くことだって可能。

 今までは許されなかった副業やバイトが、自由にできるようになるわけです。同じ業種はNG、自分の仕事に支障が出る時間帯は避ける、副業先の正社員にはならない……など、会社からさまざまな条件を提示されることは多そうです。それでも、今までは副業は禁止だった副業後進国日本の企業側も、さまざま方法を模索し始めています。

 では、今度は少し、海外の人たちの副業事情を見ていきましょう。