「大学時代、日本の地方でインターンとして働いていたんです。その時、法科大学院(ロー・スクール)への合格を周囲に報告すると、喜んでくれると思いきや、『それは、結婚できないね』と真剣に心配されました。今でも印象に残っていますね。周りの日本人の皆さんはとても優しくて、思いやりがあったからこその反応だったとは思うのですが、複雑な気持ちになりました」
 
 その8年後――カロリーナ・バン・ダ・メンスブルッゲさんは、ニューヨーク州の司法試験に合格し、国際法や人権法を強みとするジェンダーの専門家へとキャリアを築いていた。そして昨年の9月、新たなプロジェクトを手掛けるべく、再び日本へ降り立った。

カロリーナさんは、日本が大好きだというワシントンDC出身の米国の弁護士

 カロリーナさんはフェローとして、世界最大の人権団体であるアムネスティ・インターナショナルの日本支部で、ジェンダー教育プロジェクトに参画している。特に、ジェンダーを高等教育で教える際のマニュアル作成に尽力しているという。

LGBTへの偏見や差別、セクハラがまだある日本で必要なのは

 日本ではつい先日、勝間和代さんが自ら、LGBTアクティビストの増原裕子さんとの交際を公表し、「LGBTのカミングアウトには勇気がいる。それこそが、偏見や差別が残っている証しだ」とも語り、話題となった。また、女性記者による財務省前事務次官のセクハラ告発では、ハラスメントに声を挙げる#MeTooが広がりをみせ、職場で起きているセクハラやその深刻な影響が共有されるようになった。

 平等なジェンダー意識を持つことの解決策としてよく提示されるのが「若いうちからの教育」だ。先月まとめられた、内閣府の男女共同参画会議の重点取り組み事項にも、「学校現場等におけるいわゆる『アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)』への対応」が盛り込まれ、無意識に男女の役割 に対する固定的な価値観を与える「アンコンシャス・バイアス」に対し て、特に学校現場において、その解消に向け た取り組みを進めるべきだと、提言された。文部科学省でも男女共同参画社会やジェンダー平等を推進する重要性は議論され、特に教育プログラムについては、NPOセクターの役割が期待されている。そのニーズに応える現場に、カロリーナさんはいる。

 「今は、作成中のジェンダー教育のマニュアルが、現場の高校で実際に使えるものかどうかテストするため、28歳以下の人を対象にワークショップを実施しています。ジェンダーや性の考え方について安心して話せる場所を求めて、全国から参加者が集まってきています」

 私自身は15年前、中高時代を日本で過ごしたが、「ジェンダー」という言葉すら聞いたことがなかった。アメリカ留学時をきっかけにLGBTの友人や知人も増えたほか、自分が「女性はこうあるべき」と生き方や働き方について囚われてしまう背景には、自身のジェンダーに対する無意識なステレオタイプがあることも知った。今は身近な問題として認識し、関連ニュースや研究を追っているものの、そもそも教育の現場で、ジェンダーについてどうやって語ればいいのか、カロリーナさんと話すまで想像もつかなかった。

 ジェンダー教育での重要なポイントは、「ジェンダーは社会的に構成された概念である」と理解することだという。