世界を目指すために常呂町を出て行く旅人たち

白熱の試合展開を見せてくれた、イギリスとの3位決定戦。左から、吉田夕梨花さん、藤沢五月さん、鈴木夕湖さん 写真/JMPA代表撮影(毛受亮介)
白熱の試合展開を見せてくれた、イギリスとの3位決定戦。左から、吉田夕梨花さん、藤沢五月さん、鈴木夕湖さん 写真/JMPA代表撮影(毛受亮介)

 ロコ・ソラーレは、2010年に本橋麻里さんによって設立された、常呂町をホームとするチームです。チームを設立した本橋麻里さんも常呂町の出身であり、現メンバーの鈴木夕湖さん、吉田夕梨花さん・吉田知那美さん姉妹も常呂町出身の選手。藤沢五月さんも近隣の北見市美山町の出身ということで、全員が「カーリングの源流」からつながって今に至った選手たちで構成されています。しかし、そうしたメンバー構成は決して当たり前のことではありませんでした。

 カーリングがブームを起こした2006年のトリノ五輪では、常呂町出身の選手が3人いるメンバー構成でしたが、出場したのは「チーム青森」でした。前回ソチ五輪でも、常呂町出身の選手が5人中4人を占めながら、出場したチームは札幌市を拠点とする北海道銀行フォルティウスでした。

 それはつまり、常呂町はカーリングの源流ではあったけれど、どこかで行き詰まる道だったということです。道外に出て行くのか、都会に出て行くのか。故郷を離れた場所でプレーをしなければ五輪に届かないような、五輪を目指すなら故郷を離れてプレーしなければいけないような気持ちにさせる場所。常呂町とは、そんな場所だったのです。

 今大会の銅メダルを成し遂げた出場メンバーのうち3人には一つの共通点があります。それは、もともと一つの同じチームの出身だということです。2006年の全日本選手権で当時の日本代表であったチーム青森を破って日本3位となり、翌年の2007年にも日本3位となった中学生チーム「常呂中学校ROBINS」。そのチームのメンバーが鈴木夕湖さんであり、吉田夕梨花さんであり、吉田知那美さんでした。(※他にソチ五輪出場チームである北海道銀行フォルティウスの選手なども所属)

 しかし、そんな将来性あるチームでさえも、高校時代の終わりとともに岐路を迎えます。ある者は就職を意識してカーリングから離れようとし、ある者は世界を意識して地元から出て行こうとする。それは常呂町にとっては当たり前の光景だったかもしれませんが、「日本で一番そのスポーツが盛んな場所に、そのスポーツを続けていく道がない」ということを示す不思議な光景だったのです。