小平奈緒選手、31歳。ベテランの域に差し掛かる年齢で、日本スピードスケート女子で初めての金メダルを獲得しました。平昌五輪までの間に、ソチ五輪に一緒に出場した仲間が亡くなったり、日本選手団の主将を任されたりと、競技に集中しづらくなりそうな出来事が複数あった小平選手。しかし、彼女は競技に没頭できた。なぜなら本当の対戦相手を分かっていたから――。人気スポーツブログ「フモフモコラム」のフモフモ編集長に解説してもらいます。

30代を迎えたところでの急成長

ベテランになってから、急激な成長をした小平選手。そのワケは 写真/JMPA代表撮影(渡部薫)
ベテランになってから、急激な成長をした小平選手。そのワケは 写真/JMPA代表撮影(渡部薫)

 日本スピードスケート史において、初めての女子金メダリストとなった小平奈緒選手。女子500メートルにおいては昨季からの連勝を25と伸ばし、低地のリンク(※)でありながら36秒94という驚異的なタイムを記録しました。このタイムは1992年のアルベールビル五輪での「男子の」500メートル優勝タイムをも上回るものでした。もちろん女子選手としては、低地リンクでの世界記録です。

※標高があるほど空気抵抗が減るため、高地になるほどいいタイムが出やすく、低地はいいタイムが出にくいといわれています

 小平選手は、これまでの五輪ではバンクーバー大会でのチームパシュートのメダルこそあるものの、個人種目では入賞までにとどまっていました。しかし、ここにきての急激な飛躍。選手としてはベテランの域に差し掛かる、30代を迎えたところでの急成長には驚かされるばかりです。平昌五輪は「小平奈緒が勝つかどうか」を問う大会ではなく、「なぜ小平奈緒はこれほど強くなったのか」を問う大会だったと言える。それぐらい図抜けた強さがありました。

 強さを読み解く手掛かりとなるのは、やはり試合後の言葉。小平さんが残した「氷を味わう」「氷とケンカをしない」といった言葉にこそ、その神髄はあったように思います。