大いに盛り上がったフィギュアスケート男子シングル。羽生選手が成し遂げた2大会連続金メダルは、66年ぶりの偉業でした。どの選手も美しい滑りを見せてくれましたが、羽生選手が特に強い理由とは、何なのでしょうか。人気スポーツブログ「フモフモコラム」のフモフモ編集長に解説してもらいます。

最高の演技を見せてくれた羽生結弦選手 写真/JMPA代表撮影(毛受亮介)
最高の演技を見せてくれた羽生結弦選手 写真/JMPA代表撮影(毛受亮介)

 平昌五輪フィギュアスケート男子シングルで金メダルを獲得した羽生結弦選手。大けがからぶっつけ本番での金メダル、そして同種目66年ぶりの連覇という偉業は、羽生選手がいかにすごいかを物語っています。

 羽生選手はジャンプ、スピン、ステップ、いわゆる表現力と呼ばれるものまで含めてすべてが素晴らしいのですが、全体的にすごいために逆に何がすごいのか分かりづらいところがあります。

 しかし、今回のフリー演技は「スケートができるかどうか」ということまで思い悩むほどの大けがであった羽生選手が、すべてを満足にはこなせないぶん「自分の本当の強み」に絞った演技構成を採ってきました。そのため、羽生選手の本当のすごさが普段よりもよく表れています。

 右足を傷めた羽生選手にとって、最も難点となるのが踏み切り・着氷時に大きな負荷のかかるジャンプです。昨今は高難度の4回転ジャンプを何本も入れる演技構成が主流となっており、アメリカのネイサン・チェン選手などは4種類の4回転ジャンプを合計で6本もフリー演技に組み込んできました。(※フィギュアスケートでは、「3回転以上の」「同じ種類のジャンプ」には実施回数に制限があり、一つのフリー演技の中で2度跳ぶことができるのは2種類まで。4種類の4回転ジャンプを跳べる選手は、そのうち2種類を2度ずつ跳ぶことで、合計6度の4回転を跳べる)

 羽生選手も、4種類の4回転ジャンプを試合で使っていますが、足の具合を鑑みて「ジャンプ合戦」に加わるのはやめたのでしょう。2種類の4回転ジャンプをそれぞれ2回ずつ跳んで、4回転ジャンプを4回、フリー演技に組み込みました。これにより、2度ずつ跳べる2種類のジャンプをどちらも3回転ではなく4回転とすることができ、ジャンプが得意な選手に対しても大きく得点で不利になることがなくなるわけです。

 そのとき、ほとんどの選手が跳ぶ、4回転の中でも最も難度が低いとされる4回転トウループに加え、もう一つ何を選ぶのかがポイントでした。直前まで4回転ループに挑む様子も見られましたが、最終的に選んだのは4回転サルコウでした。この選択は技の難度に相当する基礎点を考慮したということではなく、けがの具合と、羽生選手の強みを生かした選択といえるものです。