そして、最後のジェーンは1998年生まれの20代です。

 「この世代は、二人目のジミーの平均寿命よりさらに15年長くなるので、65歳で定年という考えのままだと、引退してからの年月が35年にもなるのです。何という事でしょう!ジェーンは引退するまで毎年、所得の25%を貯蓄に回さなければならない。これは不可能に近く、70歳から85歳まで仕事をする必要があります」。

 このように、65歳定年を前提にした生き方はもう非現実的であるとリンダさんは力説し、「これからはおそらく、ほとんどの人が80代まで働き続ける必要があるでしょう」と断言します。

 では、80代まで働くとはどういうことなのでしょうか?

「教育→仕事→引退」という3ステージ化が崩れ、マルチステージ化へ

 リンダさんはこのように説明します。

 「これまでは、一人目のジャックのようにほぼ同じ年齢で“教育→仕事→引退”という3ステージを送る人が多い時代は、就職や離職も年齢で把握すればよく、企業にとっても人事管理がしやすく好都合でした。今でも多くの企業はこの様な考えに立脚しています。しかし今後は3ステージが崩れることは間違いなく、企業にとっても大きな課題となるでしょう。個人レベルでも、ほかの人の生き方と同じレールに乗り続けることは難しくなり、このマルチステージ化する人生への対応を迫られることになります」。

 80代まで働くということは、心身ともに健康でなくてはいけません。

 「日本人のビジネスワーカーは長時間労働が珍しくはなく、睡眠時間も短い。欧米諸国に比べて長い休暇もめったに取りません。そのような仕事のやり方を続け、80代まで健康に働き続けられるでしょうか? 自分の健康をリスクにさらしてまで仕事をする、それはクレイジーな考え方です」。

お金に換算できない無形資産を持ち、バランスのとれた生涯を

 人生が長くなれば、さまざまな経験に恵まれる機会も増えていきます。

 「学生に限らず、これまでとは違った環境に身を置いて世界を広げる“ギャップイヤー”の期間がどの年代にあってもいい。“100年時代”では、教育も10代~20代前半で終了では十分と言えなくなり、どの世代でも改めて教育を受けるチャンスが必要になります」。

 また“100年時代”では、生涯で複数のキャリアを持つことが可能になる時間も増え、人生のどこかのステージで、自分がやりたい小さなビジネスを立ち上げることを視野に入れてもいい、と提唱します。

 そして、地域貢献や趣味、友人、新しいスキルの習得など、仕事以外に費やす時間も大切です。幸せに長く人生を生きていくためには、貯蓄や不動産、年金などの“有形資産”だけではなく、お金に換算できない人間関係や評判、健康といった活力などの“無形資産”が重要になるとリンダさんは強調します。

 「無形資産に関しては売買ができません。私には50年に渡って関係を構築してきた友人がいて、今、この友情をとても貴重なものだと感じています。私たちがハッピーに生きていくためには自分の時間をどう使うのかがとても大事なのです」。