「死ぬまでもらえる」国の年金は、お得な制度

 たとえもらえる額が減ったとしても、国の年金制度には見逃せないメリットがあります。それは、「死ぬまでずっともらい続けることができる」ということです。

 手元にある定期預金は、何千万円あってもいつかは残高ゼロになる心配があります。「退職後の老後は20年だろう」と予想していたら、85歳になっても元気で、貯金が底をついてしまう。そんな将来を考えて不安になる人もいるかもしれませんが、公的年金は、毎月の日常生活費くらいの額を、振り込み続けてくれます(実際には2カ月分をまとめて隔月振込)。

 あなたの老後が何十年になろうと、振込が停止されることはありません。平均寿命を超えて長生きしても、これまでに支払った保険料の総額を超えて年金をもらってしまっても、支給をストップされることはないわけです。国の年金は、生きている限り無制限に払い続けてくれることが最大のメリットなのです。

正しい年金の入り方、たくさんもらう簡単なコツ

 そんな公的年金でできるだけ得をするためには、三つのヒントがあります。

(1)未納は絶対にしない

 日本の年金制度は加入履歴に基づいて年金額が決定される仕組みです。今は10年入れば年金がもらえますが、「10年入ったら後は入らなくてもいいや」と思っているとしたら、それは大きな誤解です。なぜなら、10年の加入では10年分の年金しかもらえないからです。年金に入っていない期間が増えるほど、将来受け取れる年金額は減っていきます。

 学生時代に2年間ほど、保険料の免除申請をしている人がいますが、そのままにしておくと、将来の年金額が低くなり、同い年の同僚がもらう年金と比べて、格差を痛感することになります。そして、その格差は一生覆せません。これからは、「年金はどうせ潰れるから」などという根拠のない理解で滞納して、将来もらう年金額をみすみす減らしてしまうような選択は避けましょう。なお、会社員は強制的に保険料が徴収されていますので、未納の心配はありません。

(2)年金には長く加入し続ける

 厚生年金の受取額を計算する式には「保険料を納付している月数」というものが入っています。これはつまり、長く加入し保険料を納め続けたほうが年金額も確実にアップすることを意味しています。

 女性の場合、一時的に無職になったり専業主婦になったりするといった選択肢で迷うこともあるかと思いますが、「年金で得をする」という観点で考えるなら、働く期間=保険料を納付する期間を、少しでも減らさないことが肝心です。

(3)元気で長く働き、長生きする

 もし元気で働き続けられるなら、65歳で年金をもらい始めるのではなく、年金受け取り開始時期を遅らせるという方法もあります。年金繰り下げといい、1年繰り下げると8.4%年金額が増える仕組みです。これによって、年金額を最後の最後に増額することができるのです。どんな資産運用よりも、運用成績としては確実かつ高利回りになるはずです。

 逆に考えると、65歳より早くリタイアして年金生活に入ろうとすると、無収入で何年か過ごすか、公的年金を減額して受け取ることになってしまいます。これはできるだけ避けてください。

 ところで、女性の場合は特に、絶対に元が取れる方法があります。それは、「長生き」です。男性と女性、年金保険料率は同じですが、女性のほうが長生きする可能性が高いわけですから、女性は年金で得をする可能性も高くなっています。

 しかし、年金の受け取りを開始してから数年で亡くなれば払い損になってしまいますから、ぜひ健康に留意して長生きし、年金生活を楽しんでください。「人より何年かは長生きをする」ことが、個人レベルで年金の損得を気にせずに済む究極の方法といえます。

文/山崎俊輔 写真/PIXTA

この人に聞きました
山崎俊輔
山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
AFP、消費生活アドバイザー。
1972年生まれ、中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。若い世代のためのマネープランに関する啓発にも取り組んでいる。日経電子版でコラム「人生を変えるマネーハック」を連載中。2歳の娘と4歳の息子の2児を共働きで育てるイクメンでもある。著書に「読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方」(日経BP社)、「誰でもできる確定拠出年金投資術」(ポプラ新書)など。


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