経営危機にあった中高一貫校「品川女子学院」を7年間かけて改革、入学希望者を60倍に伸ばすなど同校を都内有数の人気校に変えた校長の漆紫穂子さん。つらいこと、楽しいこと、働き女子の本音が詰まった著書を出版したばかりの漆さんに、働く女性へのメッセージを聞きました。後編では、30代以降に漆さんが悩まされた体調不良や、ストレスとの付き合い方などについてお話を伺いました。

漆紫穂子(うるし・しほこ)さん

品川女子学院理事長・校長。早稲田大学国語国文学専攻科修了。都内私立中高の国語科教員を経て、28歳のとき、実家が1925年に創立した中高一貫校・品川女子学院に転職。経営危機に陥っていた同校の改革に参画し、偏差値を20ポイント以上アップさせた。2017年から現職。「女の子が幸せになる子育て」(かんき出版)など著書多数。趣味はトライアスロン。世界選手権2012年スペイン大会・2017年カナダ大会 エイジグループ日本代表。IRONMAN Copenhagen 完走。

30~40代で体調を崩し、トライアスロンを始めた

――趣味はトライアスロンで、なんと昨年、アイアンマンレース(水泳3.8km+自転車180km+ラン42.195km)を完走されたそうですね。

漆さん(以下、敬称略) きっかけは30~40代に立て続けに体調を崩したことです。仕事一筋で突っ走ってきた私が、突発性難聴や目まい症に悩まされ、入院も2回経験しました。

 「運動したほうがよい」というのは自覚していたので、スポーツクラブに入会しましたが、その程度ではやはり仕事を優先して行かなくなってしまいました。それで思い切ってハードルを上げ、トライアスロンに挑戦することに決めました。トライアスロンのよい点は、レースの日程が先に決まるところ。きちんとトレーニングを積まないと危険なスポーツですので、レースの日から逆算して先に仕事のスケジュールをブロックしました。そうすることで仕事も集中して効率的にこなさなくてはならなくなり、生活にメリハリがつきました。運動すると余計なことを忘れられますし、おなかがすくのでよく食べ、夜もぐっすり眠れます。私にはこの方法が合っていたようです。

「トライアスロンの練習スケジュールを決めることで、仕事にもメリハリが生まれました」
「トライアスロンの練習スケジュールを決めることで、仕事にもメリハリが生まれました」

――やはり健康管理は大事なのですね。

 健康管理ももちろん大事ですが、健康に関する知識も大事だと思います。例えば私は、一時期ひどい動悸(どうき)に悩まされ、情緒不安定になり、病院を転々としても原因が分からなかったのですが、実は更年期障害でした。薬を飲んだらあっという間に治り、悩んでいたあの数年間はなんだったのだろう、と悔しい思いでした。さらに調べると、更年期障害や骨粗しょう症は10代の頃からの食生活も影響すると知りました。年を重ねてから後悔しないために、若い頃から女性の体と健康について知っておくことは大切だと思います。