「雑談で何を話したらいいのか分からない」の解決策

――相手が話しやすいように促すのに便利な言葉はありますか?

 特に説明が長い話をしているとき、本人は「これ、ちゃんと伝わっているかな?」と探り探り言葉を選んでいます。その心配を消してあげるために便利なのが、「まとめのフレーズ」。話の途中で「つまり、~~ってことだよね」「要するに~~だと理解していいですよね」など、聞いた話をまとめる一言を挟んでいくと、「あなたの話をちゃんと理解しているよ!」というメッセージにもなり、話し手は安心して話を進められるんです。

「最近、どう?」と上司に聞かれたら

――なるほど! では逆に、会話が弾みにくい相手と話を持たせるコツというのはあるのでしょうか? 例えば、ちょっと苦手な元上司とエレベーターでばったり一緒になり、「最近、どう?」と言われたとき、何と答えていいやら……といったシチュエーションではいかがでしょうか?

 「最近、どう?」という質問は何について聞いているのかが漠然とし過ぎていてNGです、ということは本にも書きました(笑)。

 とはいえ、実生活ではよくあるシチュエーションですよね。きっと上司も深い意味を込めずに挨拶代わりに言っているだけですから、私なら「ボチボチです」と答えます(笑)。もし会話を続けたいなら、「私はボチボチです。部長はいかがですか?」と相手にも聞き返してあげるといいと思います。

 先ほども申し上げたように、人は自分の話をしたいもの。「あなたはどうですか?」と聞かれて悪い気がする人はいないのです。案外、「よくぞ聞いてくれた」とばかりに、上司の最近の武勇伝が披露されるかもしれません。

 つい最近講演させていただいたとき、20代の女性からこんな質問を受けました。「私は仕事上、大学の名誉教授に定期的に面会するのですが、本題に入る前のちょっとした雑談として、どんな話をしていいか分かりません」と。

 私の答えはズバリ、「お天気の話をしてください」。

 なんだ、天気か、と思うかもしれませんが、天気はやはり鉄板ネタ。相手が専門家だったり、目上の方だったりすると、専門的な話をしなくちゃ、難しい話をしなくちゃと萎縮してしまいますが、「お天気の話」で大丈夫です。ただし、どんなふうに言うかによって会話の膨らみ方は全然違ってきます。

意外? 「天気の話」の大きな効果

 「今日は寒いですね」だけだと「そうですね」で終わってしまいます。そこから一歩先の情報を付け足して、「木枯らし一番が吹きましたね」「京都のほうでは雪が降るかもしれないという予報でしたね」「ここに来るまでの並木もすっかり色づいていました」といったプラスアルファの一言を添えてみてください。相手が話しやすいフックを加えるのです。

 すると、相手も「そうなんだよ。あの角にある家の銀杏が色づくのが毎年楽しみでね」というふうに返しやすくなります。「では、今度伺うときに角の家の銀杏を見てみます。銀杏には何か特別な思い出があるのですか?」といったふうに相手が乗ってきたキーワードから、「相手が話したいことは何か」と探るのがポイントです。

 間違っても「そうですか。私は銀杏ではなく、桜が好きです」なんて自分の話に引き込んではいけませんよ(笑)。あくまで「相手ファースト」の心構えで!

とにかく大切にしたいのが「相手ファースト」です
とにかく大切にしたいのが「相手ファースト」です