何歳までにフリーになるべき?

 オレはフリーになるのなら、30歳そこそこまでになった方がいいと思っている。フリーの仕事というのは、よっぽどの才能がない限り、基本的に「親分」から与えられるからだ。例えばオレは今、40歳を過ぎているけど、そうなると自分より年上の「親分」を作れる年齢ではない。

 オレはフリーになった時、博報堂に務めていた際同じ部署にいた嶋浩一郎さん(現・博報堂ケトル共同CEO)に可愛がってもらって、色々仕事をもらえた。仕事の一つは、タリバン政権が崩壊し和平に向け動き出した直後のアフガニスタンへの出張。嶋さんは当時、博報堂が発行する雑誌『広告』の編集長をやっていて、「アフガニスタンの女子アナとスッチーを取材してきてくれ」という依頼だった。和平に向けて動き出したとはいっても、まだ情勢は不安定だったから命がけの仕事だったけど、この仕事をきっかけに、取材のコツや企画の立て方などを大いに学び、以後コンスタントに仕事の依頼を受けるようになった。(なぜ、女子アナとスッチーだったか。それは、拙著『仕事に能力は関係ない。』を読んでみてください。)

 ただし、この仕事、ギャラはとんでもなく安かった。経費があまりにもかかったため、ギャラを大幅に削らざるを得なかったのだ。でも、オレは仕事のギャラに対して文句を言ったことは一度もない。依頼主にギャラの条件を言ったこともない。それはオレが受けてきた仕事はすべて下の3つの条件のどれかが当てはまるからだ。

● 成長できる
● 仕事相手のことが好き
● 金払いがいい

 アフガニスタンの仕事では、嶋さんが好きで成長できたという、2つの条件を満たしていた。

 発注主にとってフリーは「傭兵」だ。だから、相手がいかに楽に仕事ができるかということを考えなくちゃいけない。相手はそのためにお金を出しているわけでしょ。お金をくれる発注主が一番偉いんであって、そういう気持ちを持った方が、発注されやすい。こう言うとなぜかフリーの人から「媚びてる」みたいに叩かれることが多いが、まぁ、そういう方はすごい才能なんですね、としか言いようがない。