憧れのロールモデルへたどり着くための「尺度」

「すごい人って、意外と弱音を吐いていますよね」(中川さん)
「すごい人って、意外と弱音を吐いていますよね」(中川さん)

中川:僕、箭内さんが好きで。箭内さんが2003年にフリーになって「風とロック」を設立する直前、たまたま取材させてもらったんですよ。その取材が終わった後「あっ、中川君、もう少しいい?」とか言って僕みたいな小物に「中川君さぁ、俺、フリーで通用するかな?」なんて聞いてきてくれたんです。当然「箭内さん、なにバカなこと言ってるんですか! 箭内さんが通用しなかったら世間の99.99999%は通用しませんよ」なんて言いました。CMプランナーとして超有名人で、本当に才能のある人なのに弱みを見せることのできる人ですね。

おかざき:かわいげがある人ですよね。私、ウルフルズの「コマソンNo.1」という曲が好きで、その歌詞に「トータス松本のモットーとするファッションとはー? “かわいげ”」というのがあるんですけど。おしゃれとはかわいげだと思うんですよ。かわいげはずるい!

――女性ではどんな方がいらっしゃいますか?

おかざき:スタイリストの北村道子さん! 超カッコよくてあこがれです。何度もCMでお仕事を一緒にさせていただきましたが、どんな画面の端でもその彼女の服を見ると「あ、北村さんだ」って分かるくらい。ここまで行けるんだ、とワクワクさせられますね。CMも彼女の服を見て美術が決まる。あの高さまで行きたいなと思って、やってます。博報堂を辞めたのも、博報堂にいたままではあの高さには行けないなと思ったから。今月刊スピリッツで「阿・吽(あうん)」を連載していますが、空海が最澄を見つけて「あの高さか!」と狂喜乱舞するシーンがあって、そういう相手を見つけることが、人生にはすごく大切なことなんだと思います。

中川:ちょっと自分とは離れていても、ですか?

おかざき:北村さんはすごく離れていましたよ。でも、その人の大きさや高さが測れるということは、自分の中に物差しがあるということじゃないですか。例えば私は建築を見て「すごい」とは思っても、たどり着ける気がしないですけれど、あれを見てたどり着けると思った人が建築家をやっているわけですよね。