「親世代の常識」は「私たちの非常識」といえるほど、社会情勢は日々変わってきています。これからの時代、アラサー女子が目指してはいけない「3テーマ」についてセゾン投信社長の中野晴啓さんにインタビューを敢行しました。今回のテーマは「定年退職」です。聞き手は、働く女性のマネー事情に詳しいFP(ファイナンシャル・プランナー)の高山一恵さんです。

「『定年退職』という未来 期待してはいけないその理由」(この記事)
「『65歳までの貯蓄目標』 意味を無くした理由」(1月26日公開)
「『人並みに生きる』 目指してはいけないその理由」(1月27日公開)

「定年」と聞くと、まだ先のことに思えますが……(C) PIXTA
「定年」と聞くと、まだ先のことに思えますが……(C) PIXTA

高山さん(以下、敬称略):今回から3回にわたり、これからの時代、アラサー女子が期待してはいけない3つのテーマについてお聞きしていきたいと思います。1回目のテーマは、ズバリ「定年退職」についてです。

中野さん(以下、敬称略):先日、高山さんと共通の友人たちで歌手の布施明さんのコンサートに行きましたよね。70歳とは思えないほど、パワフルな歌声で感動しました。あの歌声を聴いたら、人生に仕事を引退する「定年」なんてないんだって本当に思いましたよ。

高山:本当にそうですね。すごく感動しました。もしかしたら、日経ウーマンオンライン読者の皆さんは、布施明さんを知らないのでは……。でも、「シクラメンのかほり」「君は薔薇より美しい」などは有名な曲なので、聴いたことがある人もいるかもしれませんね。

中野:アラサーの皆さんにもぜひ聴いてほしいですね。70歳であの歌声は真のプロだと思いました。今、ロンドン・ビジネススクール教授が著した「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」(東洋経済新報社)が世界中で大ベストセラーになっていますよね。この本は、100年時代の人生戦略について書かれたものですが、人生100年時代を迎えるとなると、70歳、80歳まで働くのは当たり前の時代がやって来ます。

高山:「定年退職」というと昔は「60歳」でしたが、今は希望すれば65歳までは企業で働けるようになっていますよね。2013年の高年齢者雇用安定法改正で、企業は(1)継続雇用制度の導入 (2)定年の引き上げ (3)定年制の廃止――のいずれかに取り組まなければならなくなったからです。それでも「人生100年時代」と考えると、65歳で仕事を辞めてしまったら、その後の生活がやはり大変ですよね……。

中野:今は「定年制の廃止」を選択している企業は多くない状況ですが、皆さんが65歳を迎える頃には分かりませんよね。高山さんたちFPの方々の本を読むと、「老後のお金は(定年を迎える)65歳までにいくらためる」などと記されていますが、そもそも定年という概念がなくなれば、そんな目標額も意味がなくなります。