大手広告会社・電通に勤務していた20代前半の女性が過労自殺をした事件。長時間労働、パワハラやセクハラなど、決して他人事ではない原因が考えられる今回の事件を、小島慶子さんはどうご覧になっていたのでしょうか。「人間らしく働ける環境」とは何なのか、それを獲得するためにはどうしたら良いのか――一緒に考えていきましょう。

男女共にある「刷り込み」とは

「あるべき女性像」「あるべき男性像」とは? (C)PIXTA
「あるべき女性像」「あるべき男性像」とは? (C)PIXTA

 世界経済フォーラムが発表した男女平等ランキング、2016年版「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本は144カ国中111位。昨年より10も下がって、過去最低の水準です。

 教育・健康の分野では順位を上げたものの、経済は12も下がって118位、政治も1上げたのみの103位。日本の男女の経済格差や政治的な発言力の差は、先進国とは思えないほど大きいのです。

 そういう国で女性として生きているのだということを、私たちは忘れてはなりません。

 これらの格差は様々な制度の問題が背景にありますが、男性にも女性にも刷り込まれた「あるべき女性像」「あるべき男性像」が大きく影響しているのではないかと、私は考えています。

あなたはどのぐらい、「刷り込み」から自由ですか?

 長時間労働と滅私奉公を信奉するのがあるべき男、可憐で控えめな態度で男性をそっと支え母のように包み込むのがあるべき女、という幻想から、あなたはどれほど自由でしょうか。

 いいえ私は男性並みに働いているわ、というあなたは、もしかしたらその「あるべき男像」と「あるべき女像」を両方取り込んで、引き裂かれているのではありませんか?

 昨年末、電通で過労の末に鬱病となり自ら命を絶った高橋まつりさんは、まさにそんな二つの「あるべき姿」を押し付けられていました。サービス残業も休日返上も当たり前、それがあるべき企業戦士、という企業風土と、女子らしくしろよ、というセクハラと。

 あなたにも経験があるのではないでしょうか。まるで「男社会に対等に仲間入りしたいなら、女子の役割をちゃんと果たせよな」とねじれた要求を突きつけられているような気持ちになったことが。