SNSでは情報に対して緩急をつけてみる

――最後はインスタグラムの人気と、SNSでのおしゃれ写真の投稿についてです。もちろん楽しんでいる人もいますが、疲れてきている人もいるのではないでしょうか?

鹿島 6月27日の読売新聞に、自分へのお中元に関する記事がありました。

 これはどういうことかというと、最近ではお中元を職場や取引先に送るケースは減っているけれど、メーカー側は黙って減るのを眺めているわけにはいかないので、「自分にお中元を送ったらどうですか」という提案をしているというものでした。具体的には、夏用のおせち料理や、五色のそうめんとお茶などのセットが紹介されているのですが、お中元商品で共通しているのは、写真映えでした。きれいな五色のそうめんの写真には、「いいね」がつきますよね。

お中元商品のポイントは「写真映え」なのだと、プチ鹿島さんは語ります
お中元商品のポイントは「写真映え」なのだと、プチ鹿島さんは語ります

 フェイスブックやツイッターもですが、「ネタありき」で行動している人がいると思います。ただ、それはある意味で「ネットの中に住んでいる状態」です。写真を投稿することはある種の原動力として悪いことではないのですが、そればかりにとらわれると疲れるなというのはあります。

 これは「ポスト真実」にも似ています(前編記事・私たちに必要な「ニュースの読み方」って? 参照)。「分かりやすくてインパクトのある面白いものを提供した人が勝ち」となると、ネタのために行動しようとなりますが、それは自分のリアルではありません。フェイクニュースや刺激の強いニュースに嫌気が差している読者に、少し似ていると思いますよ。

――見なければいいと思っても、ついそういう投稿を見てしまい、モヤモヤすることがあります。

鹿島 「取り込まれているよ」というのは声を大にして言いたいです。「これを買っていただいたら写真映えしますよ」というようなアプローチは、これからどんどん増えると思います。誰よりも早くこの情報を発信したいというのは人情としてありますからね。

 深刻な話では、デマの拡散の背景にも、そういう心情があると思っています。熊本地震のときに「ライオンが逃げた」というデマがありました。

 あれを最初に流した人は100%悪意なので論外ですが、拡散した人が100%悪意かというと、そうではないと思うんです。「こんな情報知ってる?」「早く知っちゃったから教えてあげる」という気持ちだったのではないでしょうか。それがデマの拡散の片棒を担いでしまっているので、「知らないだろうけど教えてあげる」というある種の優越感には、落とし穴があることを考えたほうがいいと思います。

 僕もゴシップ記事は大好きですが、すぐに拡散・発信はせず、信頼できる媒体で取り上げられていることを確認してから、話題に出します。本当に教えたくない店はSNSに上げないのと一緒で、一旦、心の中にしまっておくということです。デマやフェイクニュース、インスタの写真映えなどは、全部どこかで共通していると思うんです。ある程度、情報に対して緩急をつけたほうがいいのではないでしょうか。

聞き手・文/飯田樹 写真/小野さやか