新人を威圧する上司を生み出す職場環境とは

カワイ (笑)もう一人、「攻撃」について興味深いことを言っている心理学者を紹介するわね。

ニケ あれスルー? 絶対に性格だし、上司に問題があるんだし、ひどいやつだし……(イジイジイジ……)

カワイ もう一人はアルバート・バンデューラです。彼は「攻撃は社会の中で学習し、身に付け、維持された社会行動である」とし、これは社会的学習説と呼ばれています。

 平たく言うと「誰かが攻撃しているのを見てるうちに、『なんだ、攻撃しちゃっていいんだ~』って思ってしまう」ってこと。

ニケ 「あの人もやってるから自分もやっていい」ってことか……。

カワイ テダスキ博士の「社会的機能説」、バンデューラ博士の「社会的学習説」。共通しているのは?

ニケ どちらも「社会的」って付いてる!

カワイ ピンポ~ン! つまり、攻撃は個人の問題ではなく、社会の問題。誰もが、「攻撃を生む」環境にいると、攻撃する側に回る可能性があるってことです。

ニケ ゲッ! ってことは、29歳医療・介護関連さんの問題は「新人を威圧する上司」が問題ではなく……。

カワイ 「新人を威圧する上司を生み出す職場環境」に問題があるということです。

ニケ なるほど!

カワイ 例えば、さっき言った通り「ヒューマンサービスの現場」は、ちょっとしたミスが取り返しのつかない事態になることがあります。なので昔から、上司は部下を厳しく指導していたのでしょう。今だったら問題になるような厳しい言動もあったかもしれない。

 本来であれば「昔とは時代が違う。今はパワハラになってしまう」と認識して、指導法も考え直す必要があった。でも、そういう認識を持てなかったのね。

ニケ 昔のやり方を引きずる→部下が辞める→また昔のやり方で指導する→また部下が辞める……。ここで何らかのアクションを会社や他の上司たちが取るべきなのに、それをしなかった。

カワイ その結果?

ニケ 「なんだ。やっていいんだ~」となる。

カワイ その通りです。それに加えて、ミスへの恐怖、長時間労働、人員不足や賃金カットなど、ストレスの多い状況下では、誰もが、いつ、なんどき、攻撃する人になってもおかしくありません。