社会健康学者の河合薫さんが読者の悩みに答えるリアル人生相談連載・第22回。今回は婦人科系疾患の一つ、乳がんのお話。アラサー独身OLニケさんと一緒に考えていきましょう。

あるあるカイシャ事件簿Vol.22
「乳がんが怖い、検診が怖い、第一線から外されるのが怖い」

 先日、小林麻央さんが乳がんで闘病していることが明らかになってから、私の周りの女性たちで乳がん検診を受ける人が増えてきました。
 私は30代後半なのですが、このタイミングで受けていいものなのかと悩んでいます。
 実は数日前に同窓会があり、久しぶりに女子校の旧友たちといろいろと話をしました。結婚、出産、体の変化など、男性がいたら話せない内容で盛り上がりました。すると一人の同級生が、乳がんだったことをカミングアウトしたのです。
 まさかこんな身近に、とショックを受けました。でも、それ以上にショックだったのが、彼女が仕事を辞めていたことです。なぜなのか、詳しいことはさすがに聞けませんでした。彼女は、「評価も上司次第。病気との両立も上司次第。私は運が悪かった」と言っていました。
 私は、順調にいけば秋の大型人事で管理職に昇進です。1年かけて頑張って、昇進試験を受けてきた結果です。「もし、乳がんが見つかったら」と考えると、怖くて検査を受ける気になれません。
 自分で触診はやっています。気になる症状はありません。健康状態も極めて良好です。管理職になってからでも、検診は大丈夫ですよね? 河合さんのご意見をお聞かせください。
(メーカー勤務 37歳)

(C)PIXTA
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カワイ 昨日、国立がん研究センターからがんと診断された患者数などの推計値が発表されましたね。女性のトップは乳がん。特に、「東京」で乳がんになる人が多いという、地域差も分かったのよね。

ニケ え~、てっきり大腸がんがトップだと思ってたら、乳がんなんですか……。しかも、東京って。なんでなんですか?

カワイ 出産経験がない女性が多いことや、初産年齢が高くなっていることが影響している可能性があるとされています。ただ、食事の影響も少なからずあるという指摘もある。シングルで働く女性が多いし、結婚していてもDINKSのケースもあるし。さまざまなリスク要因があるにせよ、乳がんは女性にとって、もっとも身近ながんと言っていいかもしれませんね。

ニケ そうなんだぁ~。でも、この相談って、どうなんですか? 捕らぬタヌキの皮算用……、覆水盆に返らず……、ん? どっちも違うや。

 いずれにしても、薫さんは博士だけど医者じゃないし~。でも、この相談者の方はまだ37歳だから1~2年は検査しなくてもいいような気もするし~。どうなんですかね?

カワイ だ・か・ら、私は占い師じゃないし、外科医でも、婦人科医でも、内科医でもありません。学術博士なの。軽々に「大丈夫!」なんて言えるわけないでしょ。でもね、「検査を受けるのが怖い」という、彼女の気持ちはものすごくよく分かります。

 実は、私の母も乳がんだったの。ちょうどアメリカ生活を終えて帰国したときで、父はまだ単身赴任中だった。

 今でも鮮明に、あの夜のことを覚えているんだけど、兄と三人でテレビを見ていたときに、「薫ちゃん、ちょっとここ触ってみて」と母が言ったのね。おそるおそる母の胸に手を伸ばしたら……、卵大の大きなしこりがあってね。