パワハラは個人ではなく組織の問題
カワイ 私的なことに過度に立ち入る「個の侵害」です。パワハラは受けた側が「パワハラ」と感じればパワハラになるし、専門家でも線引きがとても難しいのね。それに25歳一般事務さんのように「告発する勇気がない」と思う人も少なくありません。
ニケ でも、本人はものすご~くしんどそうです。あの……薫さんさっき「パワハラを容認する組織自体に問題がある」って言ってましたけど、25歳一般事務さんだけがターゲットにされていて、そのことを周りは見てみぬふりをしているのか? それとも気付いていないのか? どっちなんでしょうね。
カワイ ニケさん、いい質問です!
日本ではパワハラを規制する法律そのものがないパワハラ後進国なんだけど、パワハラ(=モラハラ)先進国のフランスでは「モラハラは個人の問題ではなく、組織の問題という考えが基本になっています。
そのきっかけになったのが、1990年代ベストセラーになった、「Le Harcelement Moral: La violence perverse au quotidien」(邦題:「モラルハラスメント・人を傷つけずにはいられない」)です。
著者である精神科医のマリー・F・イルゴイエンヌ氏は、職場で日常的に行われているイジメを引用し、実際に起きたいくつもの事例を被害者目線で取り上げて、「企業経営がモラハラを助長している」と本に書いたのね。
当時、フランスでは多くの人が本に書かれていたことを経験したり、見たりしていたので、イルゴイエンヌさんの指摘はとても腑に落ちるもので、批判は「個人」ではなく「組織」に向けられることになったの。
ニケ へ~! すごいですね! っていうか、パワハラじゃなく、モラハラなんですか?
カワイ パワハラは日本の造語です。欧米では「モラハラ」という言葉を使っているのよ。
ニケ へ~! 知らなかった! 25歳一般事務さんはどうしたらいいのかな? ニケだったら……話しやすい人にまずは相談するけど……。
カワイ まずは、疲れた心を癒やす。食べる、寝る、友人にグチる。それで少し元気を取り戻したら「なぜ、急に仕事をいつも振るのか?」ということを考えてみる。その部分が改善できそうなら、上司に直接、あるいは間接的に改善策を相談する。それでもいっこうに改善されなければ、その時点で上司のさらに上の人に報告してね。
ニケ くれぐれも疲れた心を癒やす。食べる、寝る、友人にグチる。カラオケに行く。お酒を飲む。とか、心が折れないように元気を出してから、GOですよ!
文/河合薫 写真/PIXTA
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