目指すは「助け合う」リーダー

カワイ たとえ「派手な実績はないし、経験も豊富でもない」としても「精一杯やろう」という覚悟は持てますよね?

ニケ はい! それだったら持てます。

カワイ これはね、心理学の世界では「自己効力感(self-efficacy)」と呼ばれるものです。

 自己効力感は自尊心(自信)と混同されることがあるけど、自尊心はあくまでも自分への自己評価です。一方の自己効力感は、自分の行動への信念です。自尊心は性格傾向に影響を受けることが多いけど、自己効力感は成長したいという気持ちされあれば、誰もが持てます。

 たとえば、浅田真央さんが演技の前に、「自分がやってきたことを信じて、自分の演技を精一杯するだけです」ってよく言ってますよね? あれがまさしく自己効力感です。

 「私にはムリ」と言っていると、何事も成し遂げられない。でも、「自分にはできる」と自分を信じて「精一杯やろう」と覚悟する。その覚悟さえあれば、より高い目標が設定できるし、困難に直面してもそれは自分への挑戦だと思えます。

 そういう気持ちで仕事と向き合う積み重ねが、心を強くし、自分の能力を最大限発揮させるトリガーになり、いい結果をにつながるんです。

ニケ ってことは、前だけを向いてろってことですか?

カワイ それだけじゃダメ。まずは、自分のダメな部分、自分の足りない部分を、ありのまま受け入れる。そして、自分の可能性にかける。

 そのためには多少のハッタリも必要です。

 興味深い実験があります。米国の人類学者、ロバート・トリバース教授らが行った実験で、「自分は人前で上手く話すことができる」って、自身に言い聞かせている人は、自信に満ちた態度で実際のスピーチに臨むことができ、結果的にスピーチが上手になります。

 「多少の自分へのウソは、不安を軽減させ、いい結果を導く」ってトリバース教授も言っているのよ。

 ハッタリ、恐るべしでしょ? なので、相談者の方もハッタリでいいから、まずは自分を信じて精一杯やればいい。

 そのとき周りの人にも、「○○ってどうですかね?」とか、「私は××がいいと思うんですけど、意見聞かせてください」って言う具合に、耳をダンボにして、傘を借りることも忘れないでね。

 リーダーだからといって、上から見下ろす必要はありません。同じ目線で、「自分と同じように頑張っている人たちと、互いに声を掛け合い、助け合うリーダーを目指せばいい。そして、彼らに「最後は私の責任です。なので精一杯やりましょう!」と彼らの精一杯を引き出せばいい。

ニケ そっか。リーダーにもいろいろあるんですね~。助け合うリーダーだったら、私にもできそう~。

カワイ リーダーになる前に、アナタは部下の仕事、しっかりやんなさい!

ニケ へ~、明日、お腹痛くなって休もうと思ってたのに~! 

文/河合薫 写真/PIXTA

この連載は、毎週金曜日に公開。下記の記事一覧ページに新しい記事がアップされますので、ぜひ、ブックマークして、お楽しみください!
記事一覧ページは ⇒ こちら

河合薫さんのFacebookは ⇒ こちら
フォローすれば、記事公開のタイミングも分かりますよ!

※カイシャやオシゴトにまつわる悩みをお持ちの方は、ぜひ、こちらよりお寄せください。その際には、必ず「河合さん連載」と明記してください。こちらの連載を通じて河合さんに回答していただけるかもしれません。個別のお返事はしておりませんので、ご了承ください。