心臓や脳にも多大な負担がかかり、突然死も

カワイ そうです。「仕事が好き」とか「やる気があります!」という気持ちとは一切関係なく、心臓や脳は悲鳴を上げているのに。それである日突然、心臓や脳が耐えきれなくなって……、「ポン」っとはじける。

ニケ こ、怖っ!

カワイ 突然死です。いわゆる過労死です。つまりね、25歳営業さんは、「たまたま」生き残ってるだけなの。

ニケ たまたま?

カワイ そうです。たまたま生き残った。私も経験あります。

 とにかく忙しくて、睡眠時間が4時間くらいしか取れないことがありました。最初のうちは電車で寝過ごしてしまったり、ご飯を食べながら眠ってしまったり、お風呂でウトウトして溺れそうになったり。

 でも、そのうち慣れた。「人間ってさ~、結構なんでもできちゃうんだよね~」って友達に言っていたの。じんましんが出たり、突然、心臓がバクバクすることがあったのに。自慢げに「大丈夫だよ、なんとかなるよ~」って。

ニケ ニケはそこまでなったことはないですけど、「自慢げに」って……なんか分かる気がする。忙しい人ってデキる人っていうか、人気者っていうか。本人もイケイケっていうか、テンション高いですよね~。

カワイ そうなのよね。私にもそういう気持ちがありました。

 「私はこんなに頑張ってるの」「私はこんなにやらなきゃいけない仕事があるの」「私はこんなに、こんなに、こんなに……ねっ、スゴいでしょ!」って感じね(笑)。

ニケ ……ちょっとそれも羨ましかったりする……かも。

カワイ それがいかにダメな考え方だったかは、自分が体を壊すまで気が付かない。人には、承認欲求があるから、「忙しい=私は求められている」って勘違いする。心ってホントに複雑よね。

ニケ そういえば「たくさん働いてる人のほうが、幸福感が高い」ってニュースがあったような……。

カワイ 「残業時間が60時間を超えると幸福感が高まる」ってヤツですね。幸福感は残業時間が長くなると少しずつ下がるのだけど、60時間を超えると跳ね上がる。会社への満足度や仕事への意欲も同様に60時間を超えると上がる。

 ただ、調査結果をきちんと読むと、その幸福感も「疲れの見張り番」の故障だって分かります。この調査では「ストレス症状」についても聞いているのだけど、残業時間が長くなるほど食欲がなくなったり、強いストレスを感じている人の割合が増えた。

ニケ やっぱり疲れの見張り番が壊れているだけですね。

カワイ 人間って矛盾だらけです。その矛盾が結果的にプラスになるならいいけど、長時間労働や睡眠不足はマイナスにしかならない。長く働けば働くだけ、生産性も落ちます。集中力が低下するから、ミスも増える。自分では「こんなにやった! 今日も睡眠時間を削って頑張った!」と思っても、たくさん寝てから取り組めば、もっと集中して短い時間でできます。ちゃんと寝たほうが、生産性は上がります。

ニケ ってことは、25歳営業さんはまずは寝てみればいいんですね!

とにかく寝よ寝よ~! (C) PIXTA
とにかく寝よ寝よ~! (C) PIXTA

カワイ はい、6時間以上睡眠を! 仕事量のコントロールはその後!

ニケ さ、寝よ寝よ~!

文/河合薫 写真/PIXTA

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