小林聡美 「ていだん」

「会話ベタ」な自分を克服したいときに

小林聡美「ていだん」中央公論新社刊、1600円
小林聡美「ていだん」中央公論新社刊、1600円

 気のおけない友人同士のおしゃべりは弾むけれど、会社の飲み会で親しくない同僚と同じテーブルになったときや、正月の親戚の集まりで何を話したらいいのか分からない。「会話ベタ」に悩んだときに読みたいのが本書。一対一の対談ではなく3人で話すことを鼎談(ていだん)と言いますが、この本は女優の小林聡美さんがホストを務め、毎回テーマを決めて2人のゲストと鼎談した女性誌の連載をまとめています。

 井上陽水さん、小説家の川上未映子さんとは「10年後の自分たちがどうなっているか」、俳優の長塚圭史さんと小説家の西加奈子さんとは「堂々と生きることについて」。公開時に話題を呼んだ映画「かもめ食堂」で共演した片桐はいりさん、もたいまさこさんとの思い出話にホッとしたと思えば、動物愛護に取り組む中谷百里さん、石田ゆり子さんとは「動物の命との関わり方」について真面目に語り合います。

 あとがきでは、小林さん自ら「人生すべて受け身でここまで生きてきた私にとって、鼎談の女主人をつとめることは、いきなり知らない森のトレッキングガイドをまかされるような無謀なミッションでした」と苦手意識について話します。同時に「(ゲストの)私の中にはない視点で物事を捉えぽつりとこぼされた言葉には、文字どおり目から鱗が落ちました」と鼎談で得た収穫も語ります。

 親しくない人との雑談に迷ったら、相手が今興味を持っていることはないか、最近見たニュースの話題についてどう思うか、何か一つでもテーマを作って、話題を振ってみるのはいかがでしょうか。小林さんが言う通り、会話が終わる頃には「目には見えないけれど、きっとどこかの筋肉は鍛えられたのではないか」と、感じることができるかもしれません。