ゲームセンターには「人とのつながり」がある

――そもそも、ゲームセンターを好きになったきっかけは何だったのですか?

 私がゲームセンターを好きになったのも、「人とのつながり」がきっかけです。小学生の頃、習い事の前の時間潰しに近くのボウリング場に寄っていたのですが、そこにゲームセンターが隣接していたんです。

 何度も通ううちにゲームセンターの常連の方々と顔見知りになって、「(ゲームするところを)横で見てていいよ」「1回やってみな」と話し掛けてもらえるようになりました。ゲームそのものというより、そういうコミュニケーションが楽しかったですね。今でも、ゲームセンターを好きな理由は、店員やコミュニティー仲間など人とのコミュニケーションがあるから。そこは昔から変わりません。

――おくむらさんにとって、「ここがゲームセンターの魅力!」という点はどこですか?

 ゲームセンターの魅力はたくさんありますが、中でも「大きい」と「人がいる」の二点ですね。

 ゲームセンターのプレイ環境は、家庭用ゲーム機やスマートフォンとは段違いです。大画面で迫力があるとプレイしているこちらのリアクションも自然と大きくなり、誰かと一緒にゲームをするとものすごく盛り上がります。

ゲームセンターの醍醐味は、人と体験を共有し一緒に盛り上がれること
ゲームセンターの醍醐味は、人と体験を共有し一緒に盛り上がれること

 それから「人がいる」というのが私にとってすごく大切で。オンラインで対戦することももちろんできますが、すぐ隣に人がいて、一緒に盛り上がってプレイできる点こそ、ゲームセンターの醍醐味だと思います。

 ゲームの実力って、実は楽しさにはあまり関係ないんですよ。たとえゲームで惨敗しても、隣に友達がいれば笑い話になるじゃないですか。自分のゲーム体験を人と共有しやすいのは、ゲームセンターならではの魅力です。

ゲーセン通いは、行きつけのバーに通う感覚と似ている

――お勤めの会社はマーケティング関連企業ですよね。ゲーム業界への就職は考えなかったのでしょうか?

 ゲーム業界やゲームセンター業界を別の角度からサポートしたいと思って、あえて別の業界を選びました。業界の中に入ると、どうしてもその世界の常識しか知らなかったり、固定観念にとらわれてしまう瞬間もあると思います。なので、私は違う視点からゲーム業界を見ることができる力をつけたかったんです。

 例えば、人事という職種からゲームやゲームセンター業界を見ると、採用の仕方や、働き方に関する新しい提案ができるかもしれません。私はマーケティング関連の企業に勤めているので、このマーケティングのノウハウを生かせないだろうか、ともよく考えますね。

 個人的にゲームセンターに関するブログを書いているのですが、時々そこにゲームセンターをマーケティング視点で分析した記事を載せることがあります。その記事を見たゲーム業界の方から問い合わせをいただくこともあります。

――まさに、「ワークライフミックス」の一環ですね。

 人事として新卒の社員たちを見守る気持ちと、ゲームセンターに通う若い学生さんたちを見守る気持ちって、なんだか似ているんです。みんな真っすぐで、かわいくて。彼ら、彼女たちの居場所を作る、守るためなら、どんなことでも必死にやっていきたいと思えてくる。会社もゲームセンターも人が集まる「場」なので、その場をいかに居心地良いものにするか、というのが私の課題です。

 ゲームセンターに年間330日通っていると話すと驚かれることも多いんですが、ゲームはせずに、知り合った人たちと話すだけで帰る日もあるんですよ。行きつけのバーのような感覚かもしれません。そこに行けば誰かしら知り合いがいて、気楽に話すことができる。私にとって、ゲームセンターは日常なんです。行きつけの飲食店のように、行きつけのゲームセンターを持っている人を増やしていきたいですね。

文/藪内久美子 写真/品田裕美

おくむら なつこ

トライバルメディアハウス 経営企画室 組織・人事戦略担当 ゲームセンターとの出会いは小学1年生のとき。ゲームを通じた人と人とのつながりに魅力を感じ、ゲームセンターという「場」を好きになる。マーケティング関連企業で人事の仕事をしながら、年間330日ゲームセンターに通う「ゲーセン女子」として、テレビ出演やイベントの主催などを通じてゲームセンター文化を広める活動をしている。ブログ「ゲーセン女子