益田ミリ 「今日の人生」

いいことがない日でも、生きている

益田ミリ 「今日の人生」
益田ミリ 「今日の人生」

 「一日一日に感謝して生きる」。こんなふうに前向きに考えていても、何もかもうまくいかない日だってきっとあるはず。満員電車で足を踏まれた、凡ミスで上司に迷惑をかけた、大好きなドラマが録画できていなかった……。そんな「ついていない」日々が続いたら、ぜひ手に取ってほしいのが、益田ミリさんの「今日の人生」。益田さんのありのままの生活を「今日の人生」として紹介するウェブ連載をまとめた書籍です。

 「電車の中で、キリンの傘の人を見た今日の人生」という2コマで終わる日もあれば、仕事の打ち合わせに出掛け、手土産に買ったお菓子や食べたものを4ページにわたってつづる日もあります。終電間近の電車で座れたという、ささやかな幸せを描くこともあれば、「なんか、『むなしい』という日は、とりあえず<むなしさ>を味わいます」だけで終わる日も。

 何気ない日常を繰り返す益田さんに、大切な人との別れが訪れます。どうしようもなく泣きたい感情に襲われたことも、包み隠さずに描く益田さん。ふとしたきっかけで亡くした人を思い出し、人けのないスーパーで不意に涙ぐんでしまった後、「そして、泣きながら思うのです」「わたしは、この今日のことも、きっと、描くのだろう」

 忙しさや暑さにいら立つ日々の中、どんなに小さくても一日に一つでもいいことがあれば、それは幸せな人生かもしれません。でも、何も成し遂げられなくても、それが今日という人生。眠る前にこの本を読み返して、「今日という人生」を生きた自分を労ってみませんか。

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文/樋口可奈子 イメージ写真/PIXTA