たまには小説を読みたいけれど、なかなか時間が取れなくて……という人にとって、夏休みは絶好の読書タイム。せっかくなので、日常とはかけ離れた世界観に浸れる小説を選んでみてはいかがでしょうか。ミステリアスな純愛小説、女性のしたたかさが痛快な歴史小説、そして「あの事件」をモチーフした小説など、ページをめくる手が止まらなくなる小説を3冊紹介します。寝苦しい夜は、少し夜更かししてじっくり小説を読んでみませんか。

佐藤正午 「月の満ち欠け」

生まれ変わっても、また、あなたに会いたい

佐藤正午 「月の満ち欠け」

 主人公の小山内は、15年前に妻とともに事故で亡くなった高校生の娘・瑠璃の生まれ変わりを名乗る7歳の少女・るりと対面します。小山内の食べ物の好みや、家族3人での思い出を語るるりに戸惑う小山内。実は、亡くなった小山内の娘の瑠璃も生前、「自分はある女性の生まれ変わりだ」と話していたのです。

 物語は娘の瑠璃が生まれる前に遡ります。「瑠璃」という名の一人の女性が、愛した男性に会うために、たとえ何度死んでも生まれ変わると誓う。そしてその誓い通り、小山内の娘や目の前にいる少女・るりとして生まれ変わったというのです。この作品はミステリーでもあり、瑠璃という一人の女性を中心に展開する純愛小説でもあります。ラスト20ページほどで、これまで物語の傍観者でしかなかった小山内本人にも、衝撃的な「ある可能性」が突き付けられます。瑠璃の純愛の裏に隠された、もう一つの愛の物語は、きっと読む人の心をつかむことでしょう。

 本作は2017年7月に発表された第157回直木賞受賞作品ですが、著者の佐藤正午さんはこれまで何度も作品が映像化されたことのあるベテラン作家です。読者を引き込む斬新なストーリー展開もさることながら、本作の「瑠璃」のように、女性が内に秘めた強さを美しく描くのが特徴的な作家です。

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 「月の満ち欠け」が気に入った人におすすめしたいのが、2000年に出版された「ジャンプ」です。ある晩、主人公の恋人・みはるは、リンゴを買いにコンビニに行き、そのまま失踪してしまいます。失踪する理由も分からず、携帯電話も通じない状況を心配する主人公ですが、実は彼には秘密があって……。終盤明らかになる事実に、みはるの意思の強さと、「ある女性」の秘められたしたたかさが浮かび上がります。

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