各界で活躍している働く女性に、今の自分をつくった「10のこと」を伺い、その人物像に迫る本連載。今回ご登場いただくのは、アーティスト・イラストレーターの松尾たいこさんです。

 短大卒業後、自動車メーカーでの約10年間の勤務を経て、32歳で上京。35歳のときにイラストレーターとしてデビューした松尾たいこさん。現在に至るまでには、どのような経験があったのでしょうか。2018年1月19日~2月12日に六本木ヒルズ A/Dギャラリーで開催された「松尾たいこ展 in the forest」の会場でお話を伺いました。

アーティスト・イラストレーターの松尾たいこさん。「松尾たいこ展 in the forest」の会場にて(2018年1月19日~2月12日開催)
アーティスト・イラストレーターの松尾たいこさん。「松尾たいこ展 in the forest」の会場にて(2018年1月19日~2月12日開催)

【質問1】好きなことを仕事にする秘訣は?

【回答】「これだ」と思ったら行動すること

 子どもの頃から絵を描くことは好きでしたが、イラストレーターになれるとは思っていませんでした。周囲に勧められるがまま高校、短大と進学し、地元で就職。社内でやりたいことが見つからず、もやもやした気持ちを抱いたまま働いていました。

 ある時、尊敬していた男性の先輩が会社を辞めることになりました。理由は、「社内にこうなりたいと思える先輩がいないから」。自分にもそういう女性の先輩がいないことに気付き、一生に一度くらいは好きなことを思い切りやろうと思ったんです。

 周りに「絵を勉強したい」と話しているうちに、希望者が定員を超えたらくじ引きで選考をするセツ・モードセミナー(※)の存在を知りました。私はくじ引きをするためだけに、新幹線に乗って東京へ。くじは当たりで、翌日には会社に「辞めます」と伝えました。

 東京に出るときは、不安より喜びが強かったです。25歳の頃、「25歳から新しいことを始めても遅い」と思っていましたが、自分の中で勝手に可能性を狭めていたのだと、そのときに分かりました。見る人によっては、急にやりたいことを思いついて上京したように見えるかもしれませんが、10年間働いてある程度の貯金があったので、無謀に出てきたわけではないですよ。

※ファッションデザイナーやイラストレーターなど、クリエイターを多く輩出したセツ・モードセミナーは、入学希望者が定員を大幅に超えた際、入学方法にくじ引きを採用していた。2017年に閉校。