高いハードルをクリアし仕事への自信に
一級建築士として独立してから6年目を迎えた2004年。伊藤さんは仕事をやめて、事務所をたたむ決意をしていた。
「仕事に対して大きな壁を感じていて。環境や自分自身を変えて、一から出直す必要があると思いました」
工務店を経営するお父様の影響で建築家を目指した伊藤さん。事務所を構えてからは、実家の工務店や知人から紹介される仕事を主に請け負っていた。
「恵まれた環境でしたが、それではゼロからお客様との信頼を築くことにはなりません。経験の浅さから、能力が足りない気がして自分に自信が持てませんでした」
家具の勉強をしたいとの思いもあり、イギリスの大学に留学しようと決めたその矢先。友人の紹介でとある TV番組のリフォーマーとして出演することに。「仕事をやめる前に、記念に挑戦してみよう」と引き受けたが、特殊な条件下で苦戦を強いられる。
「通常はクライアントと密に打ち合わせて設計しますが、番組ではクライアントに会えるのは2、3回のみ。あとは想像力を働かせて設計を進めなければなりませんでした」
さらに、時間もなく、工事と並行してアイデアを考えるという厳しさ。考えに考えて完成したのは、自宅でお総菜屋を開きたいというおばあちゃんが、働きやすく住みやすい機能的な家。その完成度の高さは、大きな反響をもたらした。放映中から事務所の電話が鳴り始め、しばらくは建築依頼の電話やメールが殺到。このチャレンジを機に「度胸がつき、自信が持てた」という伊藤さん。以降、留学は取りやめ、目の前の仕事に誠実に取り組んだ経験が大きな力となり、スランプを乗り越えたのだった。
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