仕事でパソコンの前に座っている時間が長くなると目の疲れや肩の凝りがつらくなる、就寝前までスマートフォン(以下スマホと略)を使っていた日はなかなか寝られない、という人はいませんか?

 南青山アイクリニック東京(東京都港区)の井手武副院長は「それはブルーライトが原因かもしれない」と指摘する。「ブルーライト」って何だろう?



 「注意が必要な光線」といったら、女性の頭に真っ先に浮かぶのは、肌老化の原因になる「紫外線」ではないだろうか?ブルーライトはこの目に見えない紫外線の僯に位置しやや波長が長く、目に見える域に入ったあたりの光(可視光線)の中では一番エネルギーが強い。

 ブルーライトは昼間の太陽光にも含まれているが、急速に私たちの生活を取り巻き始めている“LEDをバックライトに使用している”IT製品、PCやスマホ、タブレット端末などの画面からも出ている。デジタル機器が普及し、いつでもどこでも使えるようになった半面、私たちは屋外より屋内でブルーライトに接触する時間が一気に長くなっているというわけだ。

 それでは、急速に浴びる機会が増えたこの光の特徴は?

 ブルーライトには、上の図に示した可視光線の中でも波長の長い赤色光や真ん中にある緑の光などに比べて像がボケたり、チラつきやすいという性質がある。これはブルーライトが散乱するから。そのため、PCやスマホ画面上の文字に一生懸命ピントを合わせようとすることによる疲れに、ブルーライトが加わって目は疲れきってしまう。

 井手副院長によると、最も多い自覚症状は

・ピントが合せにくい
・光をギラギラと感じる
・文字がチカチカする
・線を目で追いにくい

 といったものだという。

 実際にどのくらいのブルーライトが画面から出ているのかを計測したデータがある。下の三つのグラフは、画面からどのくらいの強さの光が出ているか調べたもの。

 左は旧来型の液晶PCの画面の光。青色の部分にも山があるが、緑色部分にピークがある。一方、右側の2つはLED液晶スマートフォンの画面と、同じく最新型の液晶PCの画面のデータだ。どちらも、他の色に比べブルーライトが突出して高くなっていることがわかる。

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 「PCやスマホで密なコミュニケーションをしているんだから、疲れ目は現代人が避けられない不調」などと侮ってはいられない。ブルーライトは網膜に影響を及ぼして、「黄斑変性症」といった目の疾患に関係するかも、とする研究もある。井手副院長も「黄斑変性症は老人の病気というイメージだが、ブルーライトによるダメージの蓄積でリスクが高くなる可能性がある。パソコンもスマホもない時代を生きてきた今の高齢者より、これからも長時間使っていくであろう若い人は注意が必要」と警鐘を鳴らす。

ブルーライトの害を防ぐには?

 では、どうしたらブルーライトの害を抑えることができるのだろう。

 現代の生活を考えると、ブルーライトを出す機器を遠ざけたり、使用時間を極力減らすといった対応は難しい。そこで、電子機器メーカーや眼鏡メーカーなどで研究が進められ、パソコンの画面に貼るフィルターや、ブルーライトをカットするレンズを使ったPC用のメガネなどが登場している。すでに社員のPC作業用に導入している企業もあるようだ。このような対策グッズには実際、どのくらい効果があるのだろう?

 そんな関心を持った井手副院長は自身のクリニックで、実験を行った。

実験で使用したPC用メガネ「JINS PC」
パソコン・薄型テレビ・スマートフォンなど、ディスプレイを凝視する機会が多い現代人の眼を考えて開発された、JINSオリジナルのPC専用メガネ。
http://www.jins-jp.com/

 日常裸眼で生活している被験者22人を2グループに分け、一方にブルーライトを約半分にカットするPC用メガネをかけ、もう一方はかけないままパソコン作業をしてもらった。その後で目の疲労度を調べる検査(フリッカーテスト)を行うと、PC用メガネをかけたグループの方が疲労度は低かった。また、「ピントが合わせづらい」「光がギラギラする」などの自覚症状もPC用メガネを使用したグループの方が軽かったという。



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 さらに、井手副院長監修の下、コンピューター・ソフトウエア企業の大手マイクロソフト社日本法人の社員124人が参加して、PC用メガネ着用の有無でPC作業による眼精疲労がどう変わるかを実証する試験が2011年10月に行われた。その結果、PC用メガネをかけた週の終わりと、かけなかった週の終わりでは、「ストレス」「目の奥が痛い」「首肩や背中腰の痛み」といった眼精疲労に関係すると思われる項目の多くで、メガネをかけた週のほうが自覚症状が改善していた。

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