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ディー・エヌ・エー南場さん「起業した頃」

2011年5月26日

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 社長退任を発表した、ディー・エヌ・エーの南場智子さん。「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2007」では1位を獲得し、「日経ウーマン」にも何度も登場。過去の記事から、南場さんの思いを紹介する。

一芸に秀でた人って、カッコいい

南場智子(なんば・ともこ)

1962年新潟県生まれ。津田塾大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン入社。ハーバード大学でMBA取得後、マッキンゼーパートナー(役員)就任。1999年に、その地位を投げ打って、株式会社ディー・エヌ・エーを設立。「ビッターズ」「モバゲータウン」などを立ち上げ、拡大する。2005年には東証マザーズ上場を果たす。(写真/矢作常明)

 何が厄介ったって、ぺらぺら話しかける美容師ほど厄介なものはない。今日はお買い物ですか、ってかんじで質問を連発する。しかもこちらの答えには全く関心が無さそうだ。一応聞かれたら返事をしなくては、と「はい」とか「いいえ」とか短く答える。そのうち「お疲れですね」とくる。そうでもないって、今起きたばっかなんだから。「いいえ」と答えて、目の前の女性誌に助けを求める。ゴシップだろうが何だろうが構わない。一心不乱に読んでスキを与えないことが肝要だ。

 おしゃべりな美容師と黙々とやる美容師で、どっちが腕がいいかというと、それが全く無関係だ。どっちのタイプにもスゴイ人がいる。事実私が大学四年の時に出会った天才美容師は多弁だった。見事な就職カットで怠惰な私をデキる女に仕立て上げたり、その時々の目的に応じて百点満点のスタイルをつくる。迷いがなく、スピード感があり、超正確でセクシーなハサミさばきだ。

 その美容師はかなり多弁だった。しかしよくある質問型ではなく、一方的に自分のことを話すタイプ。就職したての頃だったと思う。第一次ホーキングブームのときの会話を覚えている。「南場さん、ホーキング、読んだ?」「いいえ」「ぼく、読んだ。っていうか、読もうとした。前半すごく面白かった。でも真ん中あたりから急にわかんなくなった」

 この神々しい天才がわからない本が自分にわかるはずがない。南場迷わず放棄。手にとることさえしなかった。髪型もその美容師に言われた通りにしていた。圧倒的なスキルに裏打ちされたオーラがあった。

 その天才美容師に通っていたころはマッキンゼーという会社でコンサルタントをしていた。当時はマジで疲れていた。仕事はできが悪いがよく頑張った。頑張りすぎでよくから回りしてたなぁ。おびただしい数の失敗をやらかした。今日はその中でも特大の失敗を紹介しようと思ったが、特大級も多すぎてなかなか絞りきれない。ただ、悔やんでも悔やみきれない、というのは、やっぱりあの事件かなぁ。

 マネージャーになりたてのころ、クライアントの社長に呼ばれた。よくやってくれているとまずはねぎらいの言葉。しばらく雑談をして本題に。ひとつ頼みがある、と社長は切り出した。自分の社長としての評判を部長クラスに聞いてもらえないか、ということだった。個人名はいらないから、と付け加えた。社長の部屋に呼ばれるのはパートナー(*注:コンサルティング会社の共同経営者、取締役クラス)の仕事と決まっている。それがマネージャーになりたての私を呼んでくれたのだ。社長に信頼されて個人的に頼みごとをされたことを意気に感じてしまった。自ら改革の旗振りをしている社長の孤独さが伝わって痛ましくもあった。

 あろうことか私は忠実に実行した。聞いてみると思いのほか社長は理解されていない。とにかく批判が多いのだ。ご丁寧にレポートまで作って食事の席でそのまま伝えた。社長は一読してレポートを片手で握りつぶし、ぞんざいに放り投げた。ひとこと「だれもわかっちゃいない」とだけ言った。その後本件には一切触れられなかった。

 なぜあのとき黙って引き受けたかなぁ……。なぜ、シャチョーっ、回りの評判なんか気にしないで、って元気付けてあげられなかったのだろうか。部屋に呼ばれて胸襟をひらいてくれたそのときが、まさにチャンスだったのに……。若すぎて生意気言えなかったなら、せめてウソの報告書を出すべきだったのではないだろうか。カラオケ連れてって、部屋に閉じ込めて「それが大事」を三回連続絶唱してあげたほうが良かったかもしれない。大企業の社長だって家では単なる足のくさいオヤジだったりするわけで、責任をひとりで背負い込む立場は寂しいことも多いと思う。そういう一人の人間に、何の力にもなってあげられなかった。猿のお使いのような目的意識のない「そのまんま作業」で、もっと孤独にしただけだった。

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