
診察を訪れる女性が高齢化の一途をたどる不妊治療の世界。卵子提供は、そこで今かなり注目されるようになっており、気になっていました。そこに「野田聖子さんが卵子提供で妊娠」というニュースが飛び込んできました。
「おめでとうございます!」とまずは思ったものの、私は産科のドクターから、超高齢出産の帝王切開がどれほどリスキーか、産んだ時点で精根尽き果ててしまう人がいかに多いかという話を聞いているので、どうしてもそれを思い出してしまいます。50代ともなれば、一般的に言うなら、お金やエネルギーはもう不妊治療に投じたりしないで他のことに使うのが妥当でしょう。
ただ野田さんは、そうしたリスクは重々覚悟の上で、自分の人生にぜひ必要と考えて決断されたのでしょうから、他人がとやかく言うことではないと思います。出産には、女性の数だけ正解があるのではないでしょうか。
卵子提供とは、非配偶者間人工授精(AID)の卵子版のようなものです。夫の精子を洗浄濃縮して子宮に入れるのが通常の「人工授精」ですが、男性の精子が力不足の時、第三者の精子をもらって子宮に入れるのが「非配偶者間人工授精」です。これは意外に歴史が古く、日本でも第二次世界大戦直後からありました。
やがて、卵子を安全に体外へ取り出し、シャーレの中で受精させる「体外受精」が開発されると卵子ももらったりあげたりできるものになりました。こうして卵子提供が始まりましたが、日本では、精子をもらう非配偶者間人工授精しか認められていません。ですから、卵子提供の希望者は海を渡るしかありません。精子と卵子で扱いが違う国は大変珍しいらしく、専門家の間でしばしば話題になります。
海外では、条件つきであっても許可されている国がたくさんあります。加齢によって妊娠できなくなった女性、卵巣の病気などで自分の卵子を失ってしまった女性などにおこなわれてきました。特に米国の普及度は突出しており、全米の体外受精の中でドナー卵子によるものは約1割を占めています。
米国では、疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC )という国の機関が全米の体外受精データをウェブサイトに公開しているのですが、自分の卵子を使ったか、若い女性のドナー卵子を使ったかでデータは区別されています。体外受精は女性の年齢によって妊娠率が劇的に変わるからです。



