
1959年生まれ。不登校生徒や家族の教育相談員を経て、東京・荻窪に「カウンセリングルーム プリメイラ」を開設。働く女性、学生、カップルのカウンセリングを行う。企業・教育関係者を対象とした研修も数多く実施。著書に『「NO!」を言うことから始めよう』(大和出版)、『感じない子ども こころを扱えない大人』(集英社)、監修書として『EQテスト』(ベストセラーズ)がある。
――袰岩さんが主宰されているカウンセリングルームで出会う女性たちに、変化はありますか?
袰岩:最近はね、おとなしいタイプのお母さんの相談が多いですね。
――おとなしい? 消極的な人が増えたというようなことですか?
袰岩:いえ、そういうことではなくて。世の中には、バリバリ外に出て働きたい! というタイプじゃなくて、家の中を居心地よく整えて暮らすことに意味を見い出す人もいると思うんですね。だから専業主婦という選択肢を選んで、経済面でも何の問題もなくそのままでいられるのに、「なぜ働かないの?」と周囲から言われて不安定になったり、無理して仕事をし始めて、家の中が片付かなくなり、暮らしのペースが崩れてしまうことに大きなストレスを抱えてしまう。そんな声をよく聞くようになってきましたね。
―― 前にうかがった日本女子大の永井暁子先生のお話(「女性の4人に1人は結婚できない」時代に)では、女性のライフコースの選択肢が増えすぎてしまったことが、「自分の選んだこの道は本当に正しいのか」という不安感を呼ぶというお話があったんです。これまでは家庭に入って安住できた人が、それだけじゃだめなんじゃないかと不安になって自信が持てない。とにかく選択肢がありすぎて、どの場所にいても不安を感じてしまう人が増えているんじゃないか、と。
袰岩:それは実感としてとてもよく分かりますね。何でもOK、どれを選んでもいいんだよと言われると、かえって不安に感じてしまう。選択肢が多いからよいというわけでもないんですよね。
――選択肢は無限にあると言われても、実際には一人の人間が思いつく選択肢というのは思ったより少ないですしね。
「自分を肯定できない」人が増えている
袰岩:そうそう、やってみなくちゃ分からない、ということのほうが多い。
最近は全体的に自分自身への要求水準が高くなっているような気もします。あなたはそのままで十分いいじゃない? という状態なのに、いつまでも「このままじゃいけないのでは」と自分を肯定できない。そんな人が増えていますね。
――情報や選択肢が増えた分、自分へのハードルも高くなっていってしまう。ちょっと皮肉な傾向ですね。
袰岩:「キャリアプランを決めすぎている」というのも、最近感じていることです。このごろは、小中学校の早い時期からキャリアプランニングに取り組むところが増えたようです。でもね、15歳ぐらいではまだリアルな体験が少ないので、自己分析をしてもたいした自分は出てこないし、キャリアを考えても海のものとも山のものとも分からないんですよ。
あまりにデザインをしすぎてしまうと、あとから作り替えていくのがとても大変になるんです。これは若い女性たちにも同じことが言えます。いろいろ決めすぎるとあとで変更がききにくい。キャリアプランニングは細かくしすぎない、途中で気が変わったっていい。むしろ変わるものなんだよ、と言いたいですね。
自己分析しても、自分の中に宝の箱はない
――スピリチュアルブームののち、エニアグラム(9つの性格タイプから自分の特性を調べるもの)とか自己分析みたいなものが若い女性の間でも流行りましたし、入学や入社の際に適正テストをされることも増えました。こうした診断を受けることや、自分探しの心理テストをやってみることは、今や当たり前のことになりつつありますよね。
袰岩:はい、でもね。自分の中に宝の箱がどこかに埋まっているというイメージで自分をいじくりまわしても、実際には何かがみつかるわけでもないんです。逆に空っぽな自分が見えてしまうだけ、ということも多い。自分という宝箱の中身を探ろうと考えるのではなくて、その中身はこれから作っていくんだ、というぐらいのつもりでいてほしいですね。
――今は若いうちから本当の自分探しとか、本当にやりたい仕事を探そうといった風潮がありますよね。うちの子も中学生のときに自己分析や職業適性診断みたいなことを山ほどやらされてきてました。その時の彼の適正は「芸術家」だったんです(笑)。
最近は親も早いうちから子供に職業を決めさせようとしちゃう傾向もあるから、この手の適正診断は保護者が喜ぶんですよ。でもねえ、13歳で芸術家を目指そうって何? 逆にその他の選択肢が狭められてしまうようで、疑問に思ったことを覚えています。
袰岩:ほんとですね(笑)。とにかくやりすぎはよくないです。あまり決めすぎないほうがうまくいくんだと思います。



