「日本経済の未来は暗くない」
08年に入り、日経平均株価は急落。原因は、米国の低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)の焦げつきといわれ、世界経済に与える多大な影響と、景気後退懸念がニュースで頻繁に取り上げられた。本誌アンケートでもかつてないほど「日本経済の将来が不安」という声が高かった。
不安のもとを聞くと、収入が低い、雇用が不安定という答えも目立つ。今や、読者が実現したい夢1位は結婚や出産を抜き「収入アップ」。しかしハードルは高そう。取材では「転職して年収が下がった」という人も少なくなかった。
大学院を出てSEとなった増田由美さん(仮名=以下同・31歳)。入社時の年収は500万円弱。年3回はスパのある高級旅館に出かけ私生活も充実していたが、入社翌年、会社の業績が悪化。ボーナスがカットされたことから2年前に転職した。すると年収は290万円に大幅ダウン。技術職で採用だったのに、配属されたのは一般事務だった。「技術職に戻りたいけれど、年齢的にも以前のように働けるか自信がない。とはいえ一般事務職では年収が上がる見込みも少なく、どうしようか結論が出ません」
厚生労働省の07年上半期雇用動向調査によると、転職によって給料アップを果たした人は3割。7割が前職の年収と同等か割り込んでいる。「安易な転職を考える前に、まずこの事実を認識しておくべき」と経済アナリストの森永卓郎さんは指摘する。07年まで大企業を中心とした業績回復は目覚ましかった。とはいえ社会保険料の負担増や、定率減税の段階的廃止もあり、従業員の給与は上がらないまま。企業内を見ても、非正社員比率が上昇傾向で、会社が人件費を低く抑えようとしているのは明らか。
仕事の割に収入が低い、激務で体調を崩し失職というケースも目立つ。大学で福祉を学び、現在ケアマネジャーとして働く中村里香さん(34歳)が、最初に就職したのは、平日も終電まで帰れない職場。29歳のとき体を壊し、1カ月の入院を経て、3カ月後に新しく見つけた今の職場では「リハビリも兼ねて」契約社員となった。高学歴で、資格もあるのに、年収は290万円。目標の年収500万円にはまだ遠い。
IT企業でプログラマーをしていた長谷川優花さん(31歳)も、忙しさから体を壊した。入社2年目に3カ月間、終電で帰る毎日を送っていたら、「うつ病」と診断された。半年の休養を経て復帰したが、上司から退職を勧告される。現在、実家暮らしをしながら博物館で週末にアルバイトをして月収12万円を得る生活を送っている。
「給料の中で暮らす術を身に付けよう」
読者のケースを見て「他人事ではない…」「私も今のまま働き続けられないのでは?」と感じるなら、「生活に必要なお金を一度書き出して収支を把握しておくこと」と森永さん。
「ジェットコースターは、目をつぶって乗ったほうが怖いでしょ。生活も同じ。ただ不安、不安と言っているだけでは何も解決しません」。これだけあれば最低限の生活ができるという自分の生活の収支を知れば、不必要な不安に駆られることもなくなるはず。「実は40代、50代になってお金が貯まっている人、貯まっていない人の差は天引きで貯蓄してきたか、していなかったかの差で年収の高い低いはあまり関係ない場合が多いんですよ。お金に困らない人生を送りたいなら、月々自動引き落としの貯蓄をすることは重要ですね。家賃や光熱費、電話代といった固定費を見直して、無駄な支出を減らしたり、少なくてもその給料の中で生活する工夫をしたり、確実に貯めていくことが基本」
それでも、雇用環境は4年くらい前までの就職氷河期と比べたら、今は求人数は上昇し、中途採用も増えている。企業にも従業員へ利益を還元しようという動きが見られる。「非正社員の人なら今のうちに正社員へ挑戦してみるといい」(森永さん)
最初に触れた、サブプライムローンの焦げつきは、米国経済を左右する住宅バブル崩壊の予兆と騒がれている。足元の日本経済は大丈夫なのか? 「ネガティブな報道が相次いでいますが、米国では返済が滞るとすぐ物件を転売するし、実質的な損失は日本のバブル崩壊より少ない。しかも、サブプライムローンに関する日本の金融関係の損失は米国の10分の1程度。とはいえ損失はありますから、08年前半はこの影響は避けられない。しかし09年には持ち直すでしょう。そもそも日本経済自体の足腰が弱まっているわけではない。世界の企業と比べても、日本企業の技術力、サービスのクオリティは非常に高いですから。日本はこれから金利上昇局面に入り、緩やかなインフレとなるでしょう。今、日本経済は転換点にあるんですよ」(森永さん)
「時代を読む目を養えば、お金に困らない人生が待っている」
経済は常に変動する。その変化を長いスパンで読み解く力は必要だ。「ムードに流されてはいけません。日本経済はもうダメだと、株価が下がったところで持ち株を手放し損する人もいますが、焦るべきじゃない。実は、皆の不安をあおっておいて、株価が底値になったときに外資系企業が一気に日本株を買い占めるというシナリオだって十分考えられる。踊らされないように、しっかりと先を読むことが大切」
そのためにも、ニュースを読むときは、ヘッドラインだけを読み飛ばすのではなく、本当はどうなのか、なぜそうなったのか原因を考えてみる。分からないなら、お金に関する本を読んでみる。必要な金融知識を身に付ける。5年、10年という長い目で見て、過去の株価や円の水準をチェックしてみるのもいい。「冷静な判断力や読解力を養うことが、不安に押しつぶされず、お金に振り回されない人生を送るカギとなるんです」




