心を開かせて話を聞く
聞き上手はコミュニケーション上手
アンケートの結果を見ると52%の読者が「聞くのが得意」と答えている。しかし、相手の話をただ頷いて聞いていれば「聞く力」がある、「聞き上手」だと思うのは間違い。聞くことは話すことより難しいと専門家は口をそろえるのだ。
話し方を考えるうちに「聞く力」の大切さに気づいたというコミュニケーション・カウンセラーの高嶌幸広さん。「相手が伝えることに同調するだけでなく、それを踏まえて明確な意見を返すことが聞く力があるということ。聞くことは受動的ではなく、能動的な行為です」。話し上手といわれている著名人をよく観察すると、一方的に熱弁をふるうのではなく、相手が話したことを瞬時にまとめて返し、会話のキャッチボールを続けているのがわかる。「話し上手は聞き上手というのは本当ですよ」
ところで、頭ごなしに何かを言われて話をする気が失せてしまった、逆に「聞きましょう」という態度を示され、安心感から伝えたいことをスムーズに言うことができた――ビジネスの場面に限らず、こんな経験はあるだろう。
「人間誰しも自分の話をしたいものなんです」と高嶌さん。その中にあって、話を聞こうという態度を示すと、相手は存在を認められたという気持ちになり、本心を語ってくれるようになる。聞く側は、相手が本当に求めているものや、問題に感じていることがわかる。そして、そこに質問を投げかけて話をもっと深く、発展したものにできる。結果としてお互いの間に、信頼や共感の関係も生まれやすくなり、スムーズなコミュニケーションを実現できる。聞き上手になるメリットは大きいのだ。
下は高嶌さんが提唱する聞き上手になるための15のポイント。基本は相手の背景を考慮しながら、いい関係を作ろうという心構えで素直に向き合うこと。さらに、相手の話は最後まで遮らずに聞いて、話したい気持ちを削がないことにも気を配りたい。わからない言葉が出てきたら、柔らかい物腰で質問をすることも大事だ。確認は相手に失礼と思い込むあまり、知ったふりをすると、話の真意をつかむことはできないので注意して。
聞き上手になると…
1 共感や信頼の気持ちが
お互いに生まれる
2 本当に求められていることや
問題点がわかる
3 説得上手、話し上手になれる
4 集中力、理解力、
忍耐力を高めることができる
話したいという気持ちを抑え、相手の話を集中して聞くのは忍耐力がいる。「聞き上手になろうと努力することで忍耐力、集中力、理解力も付いてくる」と高嶌さん。
「どうも話すのは苦手」という人は、まずはこの聞く力を磨く努力をするといい。また、部下や後輩の多い人なら、信頼関係を築くうえで聞く力は欠かせないスキルだ。
「聞き上手になるための具体的なポイント15個は、すべてを実践するのは難しいかもしれません。ただ、心がけることで確実に聞く力はついてきます」。早速始めてみよう!
聞き上手になるための15のポイント
下が高嶌さんによる「聞き上手」になるための15のポイント。相手といい関係を作ろうと心がけ素直な気持ちで臨むと、自然と明るい雰囲気で会話ができるはず。会話中は、話を最後まで聞くことも大切。ちょっと話を聞けば、「それ知ってる…」と聞き手は話の先回りをしがち。しかし、相手にとっては話す達成感が削がれ、本音を話したくなくなってしまう恐れも。日常の会話からポイントを意識して聞く力を強化しよう
1 相手といい関係を作ろうという強い意志をもつ
2 相手を十分に尊重する気持ちで聞く
3 素直な気持ちで相手の話を聞く
4 相手の背景を考慮に入れながら聞く
5 否定的に聞かないで肯定的に聞く
6 わかっていることでもあえて聞く
7 相手の言葉の意味を確認する
8 相手の言葉癖を知り、真意をつかむ
9 話の先回りをしない
10 別の話題を持ち出して水を差さない
11 話を最後まで聞く
12 反論は「イエス(YES)・バット(BUT)」でする
13 上手な質問をする
14 笑顔で明るい雰囲気を作る
15 聞いたことはむやみに人に漏らさない