目を閉じるといろいろなものが見えてくる

 「陽があたって温かいから、ここにシートを敷いて、ちょっと座ってみましょうか」という上島さんの言葉に、公園に入ってから、テンションが“アゲアゲ状態”になっていたH田記者はちょっと不満そう。「もっと遊びたいよぉ」と言いたげな、子供のような顔になっている(おいおい“お仕事”なんだからねっ)。

芝生を敷いて腰を下ろし、目を閉じて1分ぐらいすると日常のザワザワモードがオフになる。風が木立を揺らす音や鳥の声や羽ばたき、誰かが枯葉を踏んで歩く音など、どんな音がするか、どっちの方向から聞こえるかに気持ちを集中していく。「東京の公園なんだから」と思っていたのだが、車が走る音は意外と遠い。それより何より、驚くほどいろいろな鳥の声が聞こえることにびっくりする。

不思議だが、目を開けているとき以上に太陽の光に意識が向う。陽があたっている顔や手が温かいし、空を見上げてみなくても、今太陽がどの高さにあるのかちゃんとわかる。

「人間は意外と目に頼って生活しているものなんです」と上島さん。「目を閉じると、他の感覚が働き出す。ネイチャーゲームのイベントでは目隠しをするものや、“ジッとしている”というものがけっこう多いんです。そうやってみんなで自然を味わうのは楽しいけど、案外一人でぼーっとしているときのほうが自然との会話を楽しめるもの。たとえば公園の中などに1か所“自分の場所”を作っておいて、四季の変化を楽しむのもいいですよ」

色や形を楽しむ

五感の感度がアップしたところで、公園の奥に流れる野川の岸に近いところへ移動。ここまずはウォーミングアップで、全員で自然の中に隠れている「ハート型」のものを探すことに。ハート型なら木の葉でも実でも、幹の模様でもいいし、大きくても小さくてもいい。冷静に考えるとちょっと滑稽なのだが、いい年の大人が5人で必死の形相で自然界のハートを探している。穐山さんは公園内の“秘密の場所”に探索に行ったのか、姿が見えない(&帰って来ない)。初心者マークのH田記者やぽてちがまごまごしている間に、田中さんは「これハート!」「ほら、こっちもハート!」と、どんどんハート型の葉っぱを探してくる。うう~ん、いったいどういう目をしているんだろう???

田中さんに限らず、3人のリーダーは自然に対するレーダーの感度がものすごく鋭い。葉っぱの間にかくれていたセミの抜け殻や膨らんだ木の芽、木の根元にしがみついていた季節はずれのカマキリなど、初心者2人の目には全然見えていないものを次々に発見して一緒に楽しませてくれるのだ。

ハート型探しの後は、色紙を使っての色探し。これは2月号の記事でも紹介した「森の色合わせ」というゲームで、色紙を用意しなくても、着ているものや持ち物の色を利用すれば楽しめる。ここで登場したのが手作りの万華鏡キット。集まったカラフルな葉っぱを入れて中をのぞくと、そこは自然の色と形が織りなす交響曲の世界。まさに世界に一つだけ、そのときだけしか楽しめない一期一会の美の世界だ。

絶対また来るぞっ!

公園をぐるっと一周して、2時間後に再び武蔵野公園の入り口へ。今までの私たちだったら15分ぐらいで公園内を1周して、何も見えず、何も聞こえないまま、「見たつもり」になっていたかもしれない。自然をいっぱい楽しめたのは、ここが「公園だから」じゃない。私たちの周囲にも自然はけっこうあって、日々変化しているのに「見ようとしていなかった」だけなのだということがよくわかった。

最後に田中さんが教えてくれた。「この武蔵野公園では4月の始めごろに、野生のフデリンドウの群生が見られるんですよ。その時期はスミレも美しい。スミレが女王の貫録なら、可憐なフデリンドウは春の妖精」

4月になったら、絶対にもう1回来なくちゃ!