フィチン酸は完全に取り除く方がいい。無い方が良い。
それは、まったくの誤解です。
全粒穀類(玄米など)が大腸がんの予防になるのは、食物繊維の効果だとよく言われますよね。でも、それは、食物繊維が善玉菌の食べ物になるからで、食物繊維が直接大腸がんを予防しているのではありません。玄米などのヌカつき穀類が大腸がん予防になる本当の理由は、フィチン酸なのです。
フィチン酸には抗酸化作用があり、特に、大腸内の酸化を防止することがわかっています。また、大腸だけでなく、他の臓器の酸化も予防してくれるため、その他の癌の予防にもなるのではないかと期待されています。
フィチン酸は癌予防をしてくれるのですから、多すぎず少なすぎず食べることが大切です。なにごともバランスですね。
フィチン酸よりも心配して欲しいのは、種(たね)に含まれるアブシジン酸(ABA)とよばれる成分です。ABAは植物ホルモンの一種で、植物の発芽を調節しています。このABAは、私達の細胞内のミトコンドリアに対して毒性を持っています。ミトコンドリアは、体温維持などエネルギー代謝にとって重要な役割を果たしているので、悪影響を受けると低体温になったり、不妊になったり、免疫力が低下し、癌など様々な病気にかかりやすくなります。怖いのはフィチン酸ではなく、ABAです。フィチン酸は残っていた方が良いですが、ABAはちゃんと取り除かないと、癌になってしまうかもしれないんですよ。
フィチン酸を効果的に取ったり、ABAを取り除くための解決法は次の通りです。
解決方法その1:浸水あるいは発芽させた後に食べる
穀類、豆類、シーズ類、ナッツ類など、いわゆる種(たね)は、浸水させることで、フィチン酸の影響を軽減し、ABAを不活性化できます。ですから、圧力鍋で炊く時もちゃんと浸水させておかなければいけません。さらに、発芽させるとABAは自然と無毒化します。他の栄養分の利用価値も高まります。発芽と言っても、プチっと白いものが見える程度が調度良いタイミングです。
発芽によって、ABAが無毒化されるだけでなく、玄米に含まれるさまざまな栄養成分が増えたり、栄養素の体内吸収率が高まったり、新しく有効な成分が発生すると言われています。特に、γアミノ酪酸(ギャバ)は、白米や玄米の数倍になるそうです。ギャバは、神経伝達物質として作用するアミノ酸の一種ですが、血圧や精神を安定させる効果があると言われています。
一方で、玄米は発芽させない方が良いとする意見もあります。じゃが芋の芽に毒があるように、種(たね)が発芽する時には、外敵から自分を守るために、毒を発生させるメカニズムがあるはずだから、発芽玄米は食べない方が良いとする意見です。
でも、同じキノコでも毒キノコと食用キノコがあるように、必ずしも、進化の過程で、じゃが芋と同じ戦略を他のすべての植物がとるわけではないように思います。それに、じゃが芋は種ではなく茎が膨らんだものですし、メカニズムが違う様にも思います。また、モヤシやブロッコリースプラウツの様に芽に栄養がある植物もあります。
個人的には発芽させることに問題があるようには思いませんが、心配な人は、発芽させなくても良いので、ちゃんと浸水させてから食べましょう。
解決方法その2:ミネラルの多い食品といっしょに食べる
穀類に含まれるフィチン酸の影響よりも、多くのミネラルを食べていれば、フィチン酸を心配する必要はありません。ご飯やパンや麺類ばかりではなく、ミネラルの多い緑の葉物野菜や切り干し大根をたくさん食べれば良いのです。
解決方法その3:ビタミンCの多い食品といっしょに食べる
ミネラルの吸収率は、ビタミンCといっしょに食べることで上昇します。お料理の中で、あるいは献立の中に、果物やビタミンCの多い野菜をいっしょに使うのが最適です。
解決方法その4:カフェイン、タンニンの多い食品といっしょに食べない
ミネラルの吸収率は、カフェインやタンニンの多い食品といっしょに食べることで低下します。なので、コーヒーやお茶、コーラなどカフェインを含んだ飲み物やタンニンを多く含む赤ワイン等は、食事中は避け、食後しばらくしてからの方が良いですね。
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ホリスティック栄養学は、何を食べるのかということと同じくらい、どのように食べるのかということを大切にします。マインドフル・イーティング(目の前の食事にまっすぐ向き合って、ゆっくり、五感を使って、噛みしめ、感謝して食べること)もそのひとつです。そして、その食事を可能にする調理においても、ちゃんと食材と向き合うことが大切となります。
それぞれの食材の性質を知って、正しく扱うことが大切です。ただ闇雲に食べれば良いわけではありませんよ。
リアル「ホリスティック美女講座」を開催
ソフィウッズ・インスティテュートが“心と体をひとつに結ぶ食事― マインド・ボディ・コネクション”をメインテーマに、リアル「ホリスティック美女講座」を開催します。食をとおして幸せ体質の作り方を学びましょう。◆6月26日(木):自由が丘の自然派ヴィーガン・レストランでは、ディナー付きお話会を開催します。
◆7月5日(土):表参道の自然療法の国際総合学院のお部屋をお借りしての、おやつ付きワークショップでは、しっかり学んでいただきます。
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1.“Grate Grains”, Institute for Integrative Nutrition
2.「国内産農産物における農薬の使用状況及び残留状況調査結果について」、平成24年6月19日、農林水産省
3.「有機栽培?オーガニック?自然栽培? ? 食品の安全性について」、2014/3/25、ソフィアウッズ・インスティテュート
4.「栄養学 - からだの生理と栄養」、香川靖男、女子栄養大学栄養学教授
5.「病人食」、香川芳子、香川女子栄養大学理事長、竹内恭子、元埼玉医科大学病院栄養部長
6.「脳からストレスを消す技術」、有田秀穂、東邦大学医学部統合生理学、名誉教授、医学博士
7.「ゆっくり食べると食後のエネルギー消費量が増えることを発見」、2014.05.09、林直亨、東京工業大学大学院社会理工学研究科教授
8.“Dissecting Anti-Nutrients: The Good and Bad of Phytic Acid”