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現実世界が変わって見える2冊の本

2013年11月1日

岩城けい著『さようなら、オレンジ』/橋本治著『初夏の色』

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 わたしの仕事は定期的なものと、そうでないもののふたつがあります。その割合は時により変化しますが、現在は定期的な仕事のほうが多い状態。つまり毎月、毎週同じところで仕事をする。テレビ出演やこの連載もその一環です。不安定な業界では、レギュラーの仕事はありがたいものです。逆に突発的、一回限りの仕事も、良い緊張をもたらします。わたしにとって、この安定と不安定のバランスが仕事の醍醐味のような気がします。

 さて世の中には、ルーティンの仕事、つまり繰り返す仕事があります。毎日同じ職場で、同じ顔ぶれに囲まれ、専門的な仕事をする。仕事の中身は変わるでしょうが、環境そのものは変わらない。変わらない仕事もいいけど、刺激も欲しい、という方に読んでもらいたい本を紹介します。

 岩城けい著『さようなら、オレンジ』(筑摩書房)。

 今年の太宰治賞を受賞した作品。主人公はアフリカからオーストラリアに流れ着いたサリマ。共にやってきた夫とスーパーの精肉作業につきますが、ある日夫は失踪。残されたふたりの息子を育てるためにサリマは必死に働きます。物語冒頭のサリマの描写が息を呑むほどすばらしい。サリマの日常、心情が生々しく迫ってきます。

 母国では満足に教育を受けることもできなかったサリマは、仕事の傍ら英語教室に通うようになります。その教室で日本人の夫についてオーストラリアにやってきた妻「ハリネズミ」に出会いました。夫に養われて勉強する「ハリネズミ」と、ほぼ文盲のサリマ。教室では何かとすれ違う二人ですが「ハリネズミ」がサリマの職場であるスーパーに仕事を求めてやってきたことから、交流が始まります。

 生まれも育ちも違う二人に共通するのは言葉に不自由であること。それぞれの母国から外国へとやってきて、言葉の壁にぶつかりながら、言葉を獲得していく過程は感動的です。

 本書はほぼ日本語で綴られており(サリマの思いもハリネズミの英文の手紙も)それゆえにサリマとハリネズミの母国を忘れてしまいそうになる。しかし二人のバックボーンをあらためて思い返すと、英語教室、そしてスーパーの作業場という限られた場所が、どこまでも広い世界だと思えてくるのです。

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Profile
中江 有里
中江 有里
1973年大阪生まれ。89年芸能界デビュー。 2002年「納豆ウドン」で第23回BKラジオドラマ脚本懸賞最高賞受賞。 NHK-BS「週刊ブックレビュー」で長年、司会を務めた。 近著に「ホンのひととき 終わらない読書」(毎日新聞社)。 現在、NHK「ひるまえほっと」‘中江有里のブックレビュー’に出演、 関西テレビ「スーパーニュースアンカー」、フジテレビ系「とくダネ!」にコメンテーターとして出演中。新聞や雑誌に読書エッセイを連載中。書評も多く手がける
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