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数百年ぶりに「エステ」を受けたお地蔵さま

2012年12月10日

鎌倉時代からの「祈りのバトン」を受け継ぐ修復作業

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 当コーナーでもすっかりおなじみとなった、 若き仏師の吉水快聞さん。 奈良にある浄土宗のお寺の副住職である吉水さんは、今年の春頃にご近所のお寺の住職からお地蔵さまの修復を依頼されました。 このお地蔵さまは蓮台の構造がもろく、お像の自立が難しい状態だったことから、「自分の代で修復をしておきたい」と、住職が吉水さんにご依頼されたそうです。

修復作業をする吉水さん。 お地蔵さま用の台座と光背を補作しているところ。キリリとした真剣な表情もステキな若き仏師です。

 お地蔵さまは、高さ40cmほどの小さな檜材(ヒノキ)の木像。「餓鬼供養」のために信仰されていたもので、 時代は鎌倉時代から室町時代にかけて作られたと推測されるそうです。 ちなみに、餓鬼供養というのは、六道の1つである「餓鬼道」におちた衆生(生きているものすべて)に食べ物を施し(布施)、供養する。そしてその功徳をすべてに回し向ける(回向)、という考えの仏教儀礼です。小柄なのに包容力のある、ありがたいお地蔵さまです。道端で出会うかわいらしい“お地蔵さん”とはまた趣が違い、“お地蔵さま”と呼びたくなる一体です。

 「小柄ですが、とても丁寧に作ってあります。いくつかの材料を的確に寄せて造られており鎌倉時代ごろの技法を引き継いでいます。しっかりとした仏師が制作したのでしょうね」

 衣の部分は、江戸時代に一度、塗り直された痕跡があったとのこと。「頭部などの肉身部は比較的状態はよかったのですが、残念ながら、衣部分の彩色は、盛り上げ彩色という技法が使われていて、全体に剥落が激しく、状態がよくありませんでした。また本来一枚の布を羽織っているはずなのに、違う布として表現されていたりと、衣の塗り分け方に間違いがあったんです。今回の修復では、比較的状態のよい肉身部の彩色を残し、衣部分は一度彩色層を除去してから、彩色をし直すことにしました」と吉水さん。

 仏像の構造や状態、いつの時代に補われた彩色なのかなどは、素人目には詳しく分かりません。さすがです……。

 それにしても、江戸時代の修復から数百年……。間違って塗られた衣を着ていたなんて、ちょっとかわいそうですね。

今回修復されたお地蔵さま。非常に端正なお顔立ちです。「衣部分の後補の彩色層を除去し、欠けている部分などに漆(木屎漆・錆漆)などで補っている状態です」(吉水さん)

 「衣以外の肉身部は、彩色はそのまま残し、クリーニング・剥落止めを施して、周囲に合わせて補彩をします。また最終的な衣部分の仕上げは造立された時代性を考慮して截金(きりがね)も施し、残した肉身部の彩色にあわせて古色を施します。」 截金というのは、金箔を細く切り、それを筆を使って貼っていき文様を描くという古典技法で、鎌倉時代のお地蔵さまにはよく施されているのだそうです。

 「修復の価値観は時代によって変わるので、100パーセント完璧な修復はないんです。だから、今できる最善を尽くす。修復って、先人達が人から人へ受け継がれてきたものを、今を生きる私たちが、さらに未来の世代へ繋ぐ歴史のバトンなんだとおもいます」(吉水さん)。

 鎌倉時代の参考作例を見ながら、時間をかけて丁寧に修復されていきます。鎌倉時代の木がお地蔵さまとなって、命を吹き込まれ、 時代を経て、現代に蘇ることになったことは、何か意味があるのかもしれません。

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吉田明乎
吉田明乎(よしだ・あきこ)
1973年生まれ。日経ウーマンなどの女性誌を中心に執筆するフリーライター。神社仏閣巡りが趣味。『こころ安らぐ「仏教女子」入門』(洋泉社)に共著者として参加。執筆のために高野山に取材に行き、すっかり空海ファンになった。
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