法則10 ベタベタ敬語ナンバーワン「させていただく」は控えめに
いつでも「させていただきます」と言ってしまうのは、「付けておけば失礼にならない」という意識が働くから。「基本的に『させていただく』は、『(許可を得て)させて』+『いただく(ことがありがたい)』という気持ちの込められた表現。例えば店の休業を知らせるときに、『お客様の許可を得て休ませていただくことがありがたい』という気持ちがあるなら『休業させていただきます』を使ってもいいでしょうが、『休業いたします』でも失礼にはなりません」(蒲谷さん)。
会話中に「させていただきます」を多用すると、くどい印象を与える。「ご説明させていただきます」を「説明いたします」とスッキリ言えるほうが、むしろ敬語上級者。
文法的に犯しやすい間違いは、「書かさせていただきます」。「書く」に「させていただく」を付けるときは、「書かせていただきます」が正しい表現だが、余計な「さ」を取り残しがちだ。
「心から相手に敬意を払いたい」気持ちが伴っていることが、どのような言葉遣いをするかよりもずっと大切。だが、気持ちがさほどないのに二重、三重に敬語を使うのは、かえって慇懃無礼な印象を与えることもある。相手と場に応じた適切な敬語を使おう。
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本日休業を知らせるとき
○ 本日、休業させていただきます
⇒ ◎ 本日、休業いたします
「お客様の許可を得て、休業させていただく」という気持ちなら、「休業させていただきます」もありだが、ややくどい。
「さ入れ言葉」は過剰敬語ではなく誤り!
× 書かさせていただきます
⇒ ○ 書かせていただきます
これでスッキリ! スマート敬語に直してみよう
× ご説明させていただきます
スッキリ!⇒ ○ 説明いたします
○ ご説明いたします
これは過剰! 慇懃な印象を与えることも
× 手前どものほうで 努力させていただきました
スッキリ!⇒ ○ 手前どものほうで 努力いたしました/努力してまいりました
× A大学を卒業させていただきました
スッキリ!⇒ ○ A大学を卒業いたしました

蒲谷宏さん
専門は日本語学・日本語教育学。敬語コミュニケーションを長年研究。文化庁文化審議会国語分科会敬語小委員会の副主査も務めた。著書は『大人の敬語コミュニケーション』(ちくま新書)など多数。
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