第1回
「彼女は『モテる』本作りを考える」
手渡されたプリントに三つの文言が並んでいる。
・潜在する!女性のマーケティング能力
・モテる女は二軒目も支払わない
・未来がときめく「気づき」の法則
蒲田三保子はじっと眺めている。
あんまり長いこと眺めつづけているものだから、「どうでしょう」と、担当編集者の堺真知子が、心配そうな面持ちで覗きこんでくる。
小首をかしげて苦笑し、
「こうやって見ると、全然違う三冊の本みたいねえ」
三保子は朗らかな声で言った。
こうして口角をあげると、片方だけある八重歯が、三保子を年若く、愛らしく見せる。彼女はそのことをよく知っている。
しかし、堺は表情を崩さずに大きく頷き、
「どんな読まれ方も期待できる本ですから、題名もいろんな角度から考えられます」
と、きまじめな声で返す。




