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イルカ問題、言い分を図にまとめました

2010年9月1日

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 これまで、イルカ漁のこと、水族館のこと、イルカ肉の水銀汚染のこと、3つのテーマについて語ってきました。すべて、映画「The Cove」で指摘されていた問題です。

 みなさんは、どう感じましたか。

 イルカ漁に限っても「かわいそうだからやめるべき」から、「イルカ漁は日本の伝統」「生業をやめろというのは乱暴」まで、いろいろな見解があるでしょう。イルカやクジラについて議論すると、同じ日本人同士ですら、さまざまな価値観がせめぎ合って、相手がどんな立場なのか分からなくなることもよくあります。そこで、ぼくが時々、話を単純にするために使っている方法を紹介します。

2つの軸で考えると、それぞれの言い分がよく分かる

 最初に言っておくと、この世界、人間社会といったものは複雑です。複雑なものを複雑なままにしておいても、人の頭では理解できないので、ある程度単純化してやる必要があります。かといって、単純化しすぎて、「あれかこれか」といった議論になっても困ります。そこで、ぼくは「最低限2つの軸を取る」ようにしています。

 イルカ問題や捕鯨問題、さらには生き物がかかわる問題系で、ぼくがよく使うのは、

・「人間中心」的か「非・人間中心」的か。
・「自然・生態系全体の保全指向」か「個体指向」か。

 という2軸です。

 前者は、何か護るべき対象があったとして、それを人間にとっての価値の中、都合がつく範囲で行うのか、あるいは、その対象(例えば動物であるとか生態系であるとか)そのものに固有の価値を認め、人間の都合とは関係なく護るべきとするか、という違いですね。

 後者は、「自然・生態系全体の保全指向」か「個体指向」か。例えば、オーストラリアで、カンガルーが増えすぎ、生態系を破壊しているとされる時、「自然・生態系全体の保全指向」の人たちはカンガルーを捕殺することに躊躇を覚えないでしょう。一方、「個体指向」の人たちは、個々のカンガルーの福祉に思いをはせ、抵抗を覚えるでしょう。

シーシェパードは第二象限

 ざっと図表にしてみました。

 横軸は「人間中心」か「非・人間中心」か。

 縦軸は「自然・生態系全体の保全指向」か「個体指向」か。

 第一象限に入る代表格は、水族館でしょうね。水族館は娯楽の場であると同時に、生態系や種の保全を訴える教育的・啓蒙的な施設です。「人間中心」「自然・生態系全体の保全指向」であるわけです。

 第二象限は「非・人間中心」で「自然・生態系指向」の立場。ここにはディープエコロジーが当てはまります。人間の価値観とは関係なく、すべての生命存在とその多様性はそれ自体に固有の価値がある、という考え方です。日本の調査捕鯨へ妨害を繰り返し、「The Cove」の撮影にも協力した自然保護団体シーシェパードなどは、思想においても実践においても、かなりディープエコロジー的かもしれません(あんなのディープじゃない、という人がいるのも事実ですが)。

 第三象限は「非・人間中心」で「個体志向」。動物の権利擁護、つまり、アニマルライツの考え方がここにすっぽりと入ります。「非・人間中心」ということではディープエコロジーと重なりますが、個体により深い関心を抱きます。

 そして、最後に残った第四象限。「人間中心」かつ「個体指向」という立場。これは、古くからある動物愛護の考えではないでしょうか。ペットを飼うのはある意味で人間中心の行為ですが、飼われる動物の福祉を大事にしようという考え。あるいは家畜や実験動物など人間に利用される生き物の存在は最低限認めつつも、彼らが被る苦痛を和らげることに心を砕いたりもします。

 イルカをめぐって、いろいろな立場の当事者がいるのですが、結局、今回の「The Cove」の問題提起は、第一象限に位置する水族館やイルカ漁(ぼくはイルカ漁も、人間中心ながら、生態系の保全に心を払う立場でなければならないと信じています)に対して、それ以外の象限からノーが突きつけられた、というふうに捉えています。

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Profile
川端 裕人
川端 裕人(かわばた・ひろと)
ノンフィクション作家・小説家。1964年生まれ。日本テレビ記者を経て、1995年にノンフィクション作家としてデビュー。著書に『イルカとぼくらの微妙な関係』(時事通信社)、『クジラを捕って、考えた』(徳間書店)、『ペンギン大好き!』(新潮社)などのノンフィクション作品、『算数宇宙の冒険』(実業之日本社)、『(1)嵐の中の動物園三日月小学校理科部物語』(角川つばさ文庫)などのフィクション作品がある。
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